第30章


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 書物の状態はすこぶる悪く、ロゼリアが開いたページを覗いてみても満足に内容を読み取れるようなも
のだとはとても思えなかった。所々がかすれ、虫に食われたような穴が開いているのだ。
 だが、そのような状態にあっても、ページが捲られる度に書物はロゼリアの眉間に嫌悪や怒りが入り交
じった皺を確実に刻んでいった。
「……内容をお聞きになりたいですか? 夕食の喉の通りを気にするならばあまりお薦めしませんが」
 書物に目を止めたままロゼリアは云う。
「構わん。話せ」
「状態が悪く読めない部分が多々あるので、内容は飛び飛びになると初めにお伝えしておきます。では――」

  ※年※月※日
  ――を用いた――の実験を行う。
  被験体に身体能力の向上、そして自己再生能力が目に見えて現れた。
  観察を続け問題が発生しなければ実験結果を――に報告し――
  ※年※月※日
  被験体に異常な凶暴性が見られる。同ケージ内の他個体を――
  実験は失敗。再生能力のため――による処分は困難と判断。凍結し、廃棄する。
  今回の失敗は――
  ※年※月※日
  改良を重ねるが、付加による被験体の――は避けられない。
  弱い個体では遺伝子がもたらす力に耐えきれず、心身共に破壊されてしまう。
  薬品の継続投与により多少は抑えられるが、強い肉体的ストレスを受けると、すぐに発作的な崩壊が
始まる。
  まず色素が原因不明の変質を起こし、全身が白く――
  ※年※月※日
  新たな実験体が――よりもたらされる。
  非常に貴重な物のため、繁殖または複製し実験に用いることとする。
  ※年※月※日
  素晴らしい成果を上げている。
  親は――たが子は無事に実験に耐え、完全に適合している。
  更に調整を行い――




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