第30章


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 一段一段、足を踏み下ろす度に、闇が触手となって身に絡み深淵へと引きずり込まれていくような嫌な
感覚が強まっていく。切れかけた電灯が一瞬点いてはすぐに消え、階段全体が雷鳴轟く不吉な暗雲を思わ
せた。

 下り終えると、道はすぐ右に折れていた。想像していたよりもずっと広く地下は広がっているようだ。
洋風の内装であった一階とそれ程変わらない造りをしているのだが、どこか病院か研究所に似た雰囲気を
漂わせていた。黴と埃の臭いは消え、何か薬品の臭いが地下に下りてから強く空気に混じり始めている。
一階程荒れてはおらず、そこが逆にこの場だけが力と意思めいたものを持って時の流れに逆らっているか
のようで不気味であった。
 俺達を狙い潜む者の可能性に備え慎重に角を曲がり抜けた先には、今度は左へと折れ続く通路と、地上
と同じ様相で頑強に閉ざされているシャッターの姿があった。
またしてもスイッチが見当たらないが、恐らくこれもどこか離れた場所に開閉の仕掛けがあることだろう。

                  ・

 案の定、それはあった。左の角を曲がった先、通路すぐ左脇の部屋で一階に設置されていたものと同じ
石像は見つかった。
 研究日誌と名が付いた、おぞましい薄汚れた書物と共に――。



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