第29章


[07] 



「研究所と言うだけあるのだからそれなりの設備とセキュリティというものがあるんだ。夜中は完全に鍵がされているだろう。
 人間の巣には隙間なんて無いし、ガラスを割ったりドアを蹴破ったりすればたちまち警報がなる。
 前に故意ではないんだがうっかりガラスを割ってしまったことがあってな。……大変な目にあった。
 人間の作る機械というのは、実に厄介な代物だということだな」
「それにもし仮にうまく忍び込むことができたとしても、僕達だけで化石を復元させるような大掛かりな機械が使えるんでしょうか?」
 確かにピジョンとロゼリアの言う通りだ。
 だが、あんな凍える思いまでしてここまで来たのだ。その程度のことでむざむざ引き下がって手ぶらで帰るわけには行かない。
「ならば鍵がかけられていない時間帯に忍び込んでやればいい」
「と言いますと? 今から行けば下手をすると忍び込んだが最後、知らない内に外から鍵を掛けられて朝まで閉じ込められるかも知れませんよ。
 昼の時間帯なんて言うまでもなく無理ですね。それに機械の操作はどうするんですか?」
 俺の言葉にロゼリアの苦言が返る。
「黙って最後まで聞け。狙うは人間の少ない早朝だ。まさか群れをなしてぞろぞろと早朝から現われたりはしないだろう。そこで最初の一人が錠を開けた所を狙う。
 機械は我らが操作することはない。常日頃奴らは化石の復元を行っているのだろう?
 ならばその研究材料のなかに琥珀を紛れ込ませておけば後は勝手に人間共がやる。ついでに他の化石から蘇った者達も奪い取ってやろうではないか」
「うーん……随分と賭けになる部分が多いですねえ。その最初の一人に見つかった場合は?」
「早朝にぐっすりと居眠りを始めた輩が一人くらい居ても何ら違和感は無いとは思わないかロゼリア。
 それとも人間にはカゴやラムの実を齧りながら持ち歩く習慣や習性でもあるのか?」
 ロゼリアは苦笑を浮かべた後、なるほど、と答えた。
「間違って毒の方をやっちゃうかもしれませんねー」
「くく、無力化できるならそちらでも構わんがな。こういう事はなるべく穏便に済ませた方がいいだろう。
 今日はここで夜を過ごす。決行は早朝。道案内と見張りはピジョン、潜入は俺とロゼリアが行う。他の者はここで待機だ」




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