第29章


[06] 



 天候も荒れることなく空の旅は順調に進み、日が落ちきる前にグレン島上空へと辿り着く事ができた。
 島の中央には堂々と大きな山が聳え、その身に夕日を受けて燃えるような赤銅色にてらてらと輝いている。
「ここがグレン島。そしてあの大きな山がグレン火山だ」
 そこでまた双子島から恒例になりつつあるピジョンのガイドが始まる。
 そしてまた恒例になりつつある、ふーん、と適当に相槌を打つミミロップとムウマージ、もごもご呻く袋、そんな周りの中で他一倍真剣に聞き入るアブソルの姿があった。
 どうでもいいのだが地理の説明をしている時の方が、ピジョンは普段に比べ生き生きとして見えるのは気のせいであろうか。

 それにしても大きな火山だ。何ともいえない胸騒ぎ、一抹の不安というものを抱いてしまう。
「火山と言っても随分と前から活動を休止しているという話だ。現に島には巣作りしてから何年も経っていそうな人間達の巣――グレンタウンがあるだろう?」
 俺の心中を見透かしたかのようにピジョンはそう説明する。
 本当にただの取り越し苦労であればいいのだが――。

 人気の無さそうな海岸を探して俺達は降り立ち、崖下のちょっとした洞窟に吊り籠を隠し身を潜めた。
 本来の目的である化石の復活を果たすため、その方法を話し合う。
 ピジョンの記憶が正しければ、研究所の大体の位置は空から眺めたこともあり掴んでいる。
 このまま待っていれば直に日は落ちる。夜陰に乗じて研究所に忍び込んで――と何時もならば行くところなのだが、それには問題があった。



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