第29章


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「予想を遥かに超えて時間がかかりそうですね……。下手をすればまだ半日、いや、一日はかかるかも……」
「……うむ」
 実験が始まってからもう数時間は経った筈だ。だが、今だにカプセル内の琥珀は元の楕円形を留めている。
 白く眩しい光がじわじわじわじわと琥珀の表面を覆おうとしてはいるのだが、今の今まで待ってようやく
全体の五分の一まで包んだ程度というのが現状だ。
「どうします? さすがにここで夜を明かすのはちょっと……。
外で待つピジョンさんも一日中僕達が出てこなかったら、何かあったのかと気が気じゃないでしょうし」
 確かにこの狭く少し黴臭い通風口の中で、これから更に一日近く缶詰になっているなど耐えられない。
 ピジョンがミミロップ達を呼びに行き全員で誤認救助に来られては大騒ぎになってしまう。
 どうするべきかと思案していた時、研究所内にチャイムの音が響き渡った。その音を聞き、研究員達は
途端に気が抜けたように気だるく背を伸ばしてみたり、欠伸をしたりしながら散り散りに実験室を出ていく。
「……昼休みというところですかね」
「一旦退くならば今が好機か」
「僕達も休憩と行きましょうか。そういえば朝から何も食べてないんですよね」「うむ」

 ――この時、俺は気付くべきだった。
 町外れの廃墟と化した屋敷で着々と脅威は育っていた。次々と積み上がる書物。
自らの出生、クローン、人間、ポケモン――様々な事を学び、知るたびにそれは歪んでいった。
 すぐにでも止めるべきだったのだ――。


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