第29章


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「ここは、えーと――実験室とありますね。例の装置があるのはここじゃないでしょうか」
 物置の隣は所長室であった。それらを経て、俺達はようやくそれらしき扉の前へとたどり着く。
「ああ。では手伝え。開けようにも鍵穴に手が届かん」
 俺とロゼリアの二匹分で丁度良く届きそうな位置に鍵穴はあった。
 ロゼリアの力では恐らく俺の体重は支えきれん、それに頭に生えている刺が危険だ。
――ということで、仕方なく俺が台となりロゼリアを支える羽目になった。
 それにしても、立場上部下である者に踏まれるのは予想以上に何とも屈辱的で堪え難い状況だ。
このような事になるのならば、多少危険は増えようがもう一匹誰かを連れてくるべきであった。
「開きました」
 後悔の念に駆られているうちに、頭上からカチリという音と声が降り掛かる。
「じゃあ、下りま――うわっ!」
 扉が開きかけたと同時に、腹いせに俺はロゼリアを振り落とすように下ろしてやった。いい気味である。

 実験室内にはパソコンと呼ばれる機械が備え付けられた机や、分厚い本が詰まった背の高い本棚が幾つも配置され、
奥にはわけの分からない大きな機械が数台置かれている。
「化石の復活を行う部屋は、どうやらここで間違いなさそうですね」
 そして機械達から伸びるコードを一身に集める円柱状のカプセルが部屋の奥隅にあった。
 カプセルの手前の机によじ登ってみると、木枠に入れられた石ころが並んでいた。
渦巻き貝や甲羅が彫刻されたような造形からして、これは実験用の化石に違いない。
 ここに琥珀を紛れ込ませておけば後は人間共の出番だ。俺達はどこかに身を潜め、
頃合いを見計らって奪い去ればいい。
「勿論、順序よく最後尾に並ぶつもりはありませんよね?」
「当然だ。結局は全て奪ってやるにしても、幾多の苦難を乗り越えてわざわざ持ってきた琥珀だ。
何が蘇るのか他の化石よりも先に見たいものではないか」
「わかってらっしゃる」
 他の化石を押しのけ、琥珀を列の先頭に置いた。そして最も若い実施日時が書かれた紙を琥珀へと張り替える。
 後はどこに身を隠すか――何気なく見上げた天井に通風口を見つけた。
位置的に本棚に上がれば格子を外して潜り込めそうだ。
 廊下の方から何者かの足音が響いてくる。急がなければ。





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