第28章


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 時はピカチュウ達がグレン島へと旅立つ数日前。
 場はハナダシティ近郊の洞窟。元より怪物が住んでいるだとか、組織のアジトになっているだとか、とかく黒い噂が絶えない場所である。
 事実、通常では考えられぬ程凶暴化した強力なポケモン達が住み着いており、グレン島のポケモン研究所より派遣された調査隊が命からがら逃げ帰ってきた過去を持つ。
 命を軽んじている者や事情を知らぬ者が入り込まぬよう、そして内部に住み着く凶暴なポケモン達が外に出ぬよう、入り口も封鎖を施され、開かずの洞窟と化したはずだった。
 人為的な力で壊された施錠。留め具を無くした鉄扉が虚しくキィキィと音を立て揺れている。
 人間にとってポケモンにとっても絶大な脅威は、洞窟の奥深くで目覚めさせられようとしていた。

「脳波、心搏、正常だ。記憶の初期化も完了している。赤ん坊のように真っ白――とはいかないがね」
 培養液で満たされた大きなカプセルからは何本ものコードが伸び、周りを囲む機械に繋がっている。
 研究員風の男が機械の前で忙しなく指を動かし、作業をしている。
「後は洗脳ってやつをするだけか」
 カプセル内に浮かぶのは長い紫の尾を持つ、背の高い生物。体中にプロテクターのような物を付けられ、胎児のような格好で身動き一つせずにいる。
 そして黒い服を着た二人の男がその様子を見ていた。二人とも服の胸の辺りにアルファベットで大きくRと書かれている。

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