第28章


[05] 




 吐く息は白く濁り、足の裏からは冷ややかな感覚が伝わってくる。
「うう、寒い、寒い。ねえ、ピカチュウ。抱っこしてもいい?」
「断じて断る」
 ちぇっ、とミミロップは長い耳で自らの体を包んだ。
 この気温……マントがある俺や、耳であの通りのミミロップと厚い毛並みのアブソル、霊体であるムウマージは比較的大丈夫そうだが、心配なのはロゼリアだ。
 外での待機を勧める俺に、ロゼリアは平気だと返す。とても平気には見えないのだが本人がそう言うのだ。無理だけはするなとロゼリアには伝えた。
「いつ何が起こるかわからない。全員、離れないように行こう」
 ピジョンのいう通りになるべく離れぬよう、洞窟を進む。
 広い洞窟の内部は地から天井、そこらに転がっている岩までもすべて氷に覆われ、外からの光で淡く煌めいている。
 音まで凍り付いてしまったかのように、洞窟内は静まり返っていた。俺達の足音だけが静けさに響き渡る。
 奥へと行くたびに冷気は少しずつ強まっていくが、ピジョンの探し求める化け物鳥どころか一匹もポケモンの姿を見かけない。凍った岩ばかりがその数を増していく。
 やれやれ、と、凍り付いた岩の一つに何気なく手をかける。ぐらりと簡単に岩は倒れ、転がった。
「――ッ!」
 反射的に手を戻し、飛びのく。洞窟内に混じりあった悲鳴が反響した。
 凍った岩だと思っていたそれは、ポケモンの姿をしていた。平たい嘴のような突起と全体的にずんぐりとした造形からして、これは元々はコダックであったのだろう。
 ――縄張りは近そうだ。



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