第28章


[14] 



「ピュイッ――!」
 上空から短い叫び声が響く。反射的に見上げると、ピジョンが右翼の先を凍り付かせ、回転しながら墜落してこようとしていた。
 さらなる追い撃ちをかけるつもりか、青白い鳥も急降下を始める。
「ピジョン!」
 させまいと俺達が放つ攻撃も軽々とかわし、更に降下速度を上げて距離を縮めていく。
 しかし、どういうつもりか青白い鳥は落ち行くピジョンを追い抜いた。そしてピジョンではなく俺に狙いを定め、白い光を収束させる。
 駄目だ、これでは回避も間に合わん。直撃か――。そのな時、あの鳥がピジョンの攻撃を防いだ方法が脳裏をかすめる。氷の壁……壁――!
 無意識に出した左手に電力を集中させると、電気が盾のように丸く展開した。
 青白い鳥は慌てるように翼を広げて降下を止め、放たれた白い光線は、その広がった電流の壁により分散しながら逸れ、ひんやりとした感覚だけが体に伝わる。
「ピカチュウ、それは……?」
「咄嗟の思い付きだ。とにかくこれで奴の攻撃は防げそうだ。全員、俺の後ろに隠れろ。奴が降りてきた所を一気に叩くぞ」
 ミミロップ達は一斉に俺の後ろに回り、攻撃に備える。ピジョンの方は何とか翼の氷が剥がれ、地面すれすれのところで体勢を立て直していた。
 しばらく様子を見ていた青白い鳥は、おもむろに大きく一鳴きした後、再び降下を始める。
「さあ、何度でも撃ってくるがいい! 何度でも防いでやる」
 奴は自分の前に尖った氷塊を形成しながら氷を身に纏い、自らを礫――最早そんな次元ではない、巨大な氷の馬上槍のようにしてこちらへと突っ込んでくる。あれではこの壁でも防ぎようがない。
「に、逃げろ!」
「え?」
「……さすがにあれは無理だ。見ろ」
「ええーっ?」
 半ば絶叫に近い声を上げながらミミロップ達は散開し逃げ出す。俺も落下してくるであろう地点から離れようと必死に走った。
 なんという無茶苦茶な奴だ――!



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.