第28章


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奴に痛手を負わせるチャンスを逃した今、小柄な体を活かし小刻みに旋回し、追跡を振り切ろうとピジョンが翼をしならせる。
が、あの巨体からは想像できないほど滑らかに青白い鳥は羽ばたき、まるで狩りを楽しむように少しずつ距離を少しずつ詰めていった。
ピジョンが凍てつく風に飲み込まれるのも時間の問題だろう。
援護しようにもこの距離では電撃は届かない。
まずこの忌まわしき氷を始末しなければ―――

振り向くと既にミミロップ達がこちらに向かって駆け出している。
―――どうやら皆考えていることは一緒のようだ。
 「私の出番ってことね。」
最近目立った活躍が無かったからだろうか、どこかしら嬉しそうに声を弾ませている。
 「そうだ、わかっているな?」
 「もちろんよ、私のほっかほかの毛皮でピカチュウを包んで…」
 「・・・・・」
 「じょ、冗談よ、冗談。」
と言いつつも、こちらに向かって伸ばしていた手を素早く引っ込めたところを見ると半分本気だったようだ。
まったく、状況が読めているのかいないのか―――。
肩を大きく2、3度回し、ミミロップの拳を炎が包み込んだ。
 「行くわよっ!」
ガツンッ
燃え盛る拳が凍結した俺の背中を捉え、大きな衝撃が走る。
右足の踏ん張りだけでは足りず前につんのめってしまったが、同時に温かさが広がり左足に感覚が戻ってきた。
 「大丈夫だった?」
 「うむ、問題ない。さっさとあの怪鳥を地面に引きずりおろすぞ。」
 「「おーーー!」」

―――それにしてもさっきから何か焦げ臭いのは気のせいだろうか?
何となく皆の顔が引きつっている気もするが。

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