第28章


[12] 



「ピジョットさん、今に敵をとります……!」
 ピジョンが大きく翼を広げて空を強く叩くと、俺達の背後から風が強く吹き流れ始めた。
 羽ばたきながら地を数回蹴ってピジョンはその風に乗り、天井すれすれまで一気に舞い上がる。
 俺もそれに乗じて攻撃に移ろうとするが、右後ろ足が急に地に固定されたように浮かず、態勢を崩してしまった。
 何事かと下半身を見ると、先程光線を受けた尾の凍結部がじわじわと広がり始めており、左後ろ足まで侵食が進もうとしている。
 擦っただけでこの始末とは……まるでたちの悪い毒のようだ。放っておけばこれが全身に回るのだろうか。
 嘲笑うかのように、青白い鳥はろくに動けない俺にじっくりと狙いを定めながら第二射の準備を始める。
「――ッ! ピカチュウ!」
「来るな!」
 駆け寄ってこようとするミミロップ達に気付き、俺は大声で止めた。
 虫けらを見下ろすようにしている緋色の目を、睨み返しながら電流をスパークさせて挑発し、注意をひたすら俺だけに引き付ける。
 幸いにも、攻撃を一度かわされかけたのが余程気に入らなかったのか完全に俺に集中し、強襲しようと急降下するピジョンに奴は気付いていないのだ。
 距離は後、三……二……一……――ッ!
 ガキン、と堅いものがぶつかり合うような音が洞窟内に響く。
「ぐッ……!」
 寸でのところで、喉を掻っ斬ろうとしていたピジョンの足爪は阻まれていた。空気中の水分が壁のように凍り、その主を守ったのだ。
 白く凍てついた怒りの吐息を嘴の端から漏らしながら、氷の凶鳥はピジョンを睨み上げる。
 舌打ちしながら足爪を氷から抜き、再び宙へピジョンは羽ばたき上がった。甲高く透き通った鳴き声を上げて、青白い鳥もそれを追う。



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