第27章


[09] 



樹の上から突然落下してきた“それ”は、前足で頭をさすりながら体をゆっくりと起こした。しなやかさの中に強靱さを秘めたその体躯は敏捷な肉食獣を思わせる。
「いたた……ビックリしたニャー。突然大声出さないでほしいのニャ」
 ぶつぶつと文句を言いながらこちらに体を向け、呆気に取られている俺達を縦に細長い瞳の目でじとりと一睨みした。
 この展開は前にも覚えがある。とぼけた様子、樹の上で眠る癖――姿形は少々変わってはいるが間違いないだろう、あのニャースだ。
 あの頭でっかちだった体がよくもまあここまで変わるものだ。額には小判の代わりに宝石のようなものが一つ輝いている。
「久しいな、ニャース」
「んー? あんたら何て知らないのニャー。それにボクはペルシアンだニャー。あー、落っこちてぶつけたところが痛い痛いのニャー」
 素知らぬ風にニャース――ペルシアンはぺろぺろと前足で顔を洗い、白い毛並みを整え始めた。先っぽがくるりと巻いた長い尾を馬鹿にしたようにふらふら振っている。
 どうやら三年前と同じように“あれ”を食らいたいようだ。
「それならば仕方がない、我が電撃を用いたショック療法にて思い出させてくれよう」
 電流がほとばしる音を聞き、ペルシアンはびくりとしてこちらに向き直った。
「じょ、冗談だニャ。久しぶりだニャー、ピカチュウサマ。ボクの所に来ようとしてたのは知ってたニャ。何だか随分とうろうろ迷ってたみたいだニャー?」
 ……? 何故、俺達が迷っていたことまで知っている。


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