第26章


[07] 



 パラセクトに続き、おつきみ山の入り口をくぐる。
「何だか――前に来たときよりこの洞窟、随分と小さくなってない?」
 最初にその異変を口にしたのはミミロップだった。
 そうなのだ。あれだけ広かったおつきみ山の洞窟は随分と狭くなり――そして所々に人間用であろう道案内の貼り紙が貼られている。
「……どういうことだ?」
 パラセクトはぴたりと歩を止め、悔しそうに地面に爪をたて、えぐる。
「人間――さ。ことの発端は小さな落盤――」

 俺達がいなくなってから一年目頃、おつきみ山で小規模な落盤が発生したらしい。おつきみ山へ観光に来ていた人間がそれに巻き込まれ、命までは落とさなかったがそれなりの怪我を負ったらしい。
 元々、このおつきみ山は観光地としても人間達に有名であったところだ。それがいけなかった。
 観光地としての顔も持つ山が落盤するようでは危険だ、このような事が起こらぬように整備を。観光地としては広すぎる、遭難者が出ぬよう規模の縮小を。観光地なのだから少しくらい山を削ってでも土産物屋を――。
 どんどんと人間達の加える手はエスカレートしていき――今に至るそうだ。
「住みかを勝手に作り替えられちゃたまらないから、僕達もそれなりに工事を邪魔したり抵抗したんだけどね……。無駄だった」
 様々な出会いにより、少しだけ和らいでいた俺の人間に対しての怒りが再燃し始める。
「でも、不思議なんだ。数件建てられる予定らしかった土産物屋を一件だけたてて、人間達は工事を止めてしまった。そればかりか少しずつ元の環境に戻そうとしてくれているんだ。
 最初は僕達の抵抗の賜物だと思ったんだけど、実際はポケモンリーグの監視が強まり、ポケモン達の住む場所を好き勝手にいじくれなくなったからだってさ。三年前に就任し、今もずっとその座を守っている若いチャンピオンの強い意向なんだって」
 人間というやつはこれだからわからない。時折、このような情を我らに向ける者がいる。わからない――。



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.