第26章


[04] 



 自分に似せた人形に、ロゼリアがふーっと息を吹き掛ける。すると千切れかけた人形は綿ほうしと葉っぱに戻り、風にくるくると舞って消えていった。
 綿ほうしが消えていくのを見届けた後、ロゼリアは俺の方を振り向きにこりと笑ってみせる。
「誰かさんの真似、ですよ。即席でしたがね。やってみると案外単純で簡単なものですねー相手を変わり身で撹乱する戦い方って」
 そして表情、声色一つ変えずにそう言ってのけた。悪意が無さそうに爽やかに笑ってはいるが、俺に対して向けられている嫌味はひしひしと伝わってくる。本来ならばこの態度に憤慨している所なのだが――言い返せない。
 強靱な肉体や甲殻を持つ者達とは違い、俺の体は非常に小さく脆い。その為、決して相手の攻撃をまともに受けるわけにはいかない俺にとって、敵の目を欺き、虚を突く身代わりという戦法は基本であり有効な立ち回りなのだ。
 だが、その仕組みは人形などを使った簡単で単純なものだというのは事実。一度見破られてしまえばもうその戦闘において効力は薄まってしまう。
 見抜かれてしまうような自体は今まで無かったのだが――これは“たまたま”運が良かったにすぎない。このままではまずいであろうな。何か、新たな何らかの手段、戦法を考えなければなるまい。

「あのー……ごめんなさい、僕少し言いすぎましたかね?」
 難しい顔をして黙り込んでいたであろう俺の顔を、少し申し訳なさそうにロゼリアがうかがう。
「いや、欠点を改めて見なおせた。感謝する」
 俺の言葉にロゼリアは怪訝そうに首を傾げる。気にするな、と加えておいた。
 そうこうしている内に、サンドパンがうめき声を上げて体をぴくりと揺らす。む、目覚めるか――。




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