第26章


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「ダメです、まるで成長していません……。いい加減、耳が耐えられなくなってきました」
 ロゼリアのレッスンは自身の草笛を用いたそれなりに形となったものであった。だが、プリンの好き勝手に暴れ回っている不協和音達を更生させるには至らず、音感や音程達が帰ってくることはなかった。
 その後も、美しい毛並みを維持する美容への道、歪んだ性の悪さを正す精神論、楽しい散歩、おやつのじかん、他にも様々な講義を――よくわからないものまで混じっていた気がするが――試したがあまり成果は上がらなかった。

「全然、プクリンさんに近付けている気がしませんよぉ! ダメダメじゃないですかぁ。役に立たない奴らですぅ」
 これだけ何とかしようと奔走する俺達に、感謝の欠けらも無さそうにむくれ面を向けるプリン。
「ええい、まだ何が足りないというのだ! 戦闘の経験か? ならば今すぐにでも電撃を――」
「プクリンさんはそんな野蛮なことをしませんよぅ! まったくぅ。いいですかぁ、私がプクリンさんに近づくのに一番大事なのは、月の石っていう珍しい石なんですよぉ。あんたにはとてもじゃないけど手に入らないと思いますけどぉ」
「……まさか、これのことか?」
 おつきみ山でパラセクトに手渡された石を取り出し、プリンに見せる。
「あああぁっ! それですぅぅぅ!」
 プリンは元から丸い目を更に丸くする。そして、俺の手から引ったくるように石を奪い取った。
 プリンの手の中で月の石は輝きだし、それに共鳴するようにプリンの体も不思議な光に包まれる。
 ――めでたくはないがプリンがプクリンへと進化を遂げた。丸かった体は少し縦に伸びて楕円状になり、三角だった耳も兎のように長く伸びている。



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