第26章


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「とにかく、だ。そのようなことは止めてもらわねば困る」
 事を無闇に荒げる気はない。ここは出来るだけ柔らかに言い聞かせ、止めさせるとしよう。
 パラセクトからこの辺りのポケモンには俺達のことがしっかり伝わっているはず。すんなりと受け入れるだろう――。
「嫌ですぅ。何で止めなきゃならないんですかぁ?」
 悩む間も無き即答。予想から外れた対応に、出そうとしていた言葉が詰まる。
「……我が直々の命令が聞けんだと? あのようなはた迷惑な騒音を鳴らされては――」
「あんたなんて知らないですぅ。それに騒音って何のことですかぁ!」
「なにぃ? お前のあの下手くそな――」
「下手くそってひどいですぅ! プリンちゃんのビューティフルソングですぅ」
 プリンは目をつり上げ、またぶわっと体を膨らませた。
 ぐぐと自分の拳に力がこもるのを感じる。だが我慢だ、我慢。この程度のことで平静をうしなうわけにはいかん。
「ビューティフルでもなんでもいいが、とにかく雑音まがいの――」
「雑音って何ですかぁ!」
「だから、聞くに堪えないお前の歌――」
「失礼すぎますぅ! プリンちゃんのゴージャスソングになんて言い草ですかぁ!」
 噛み合わないやり取り、傲慢なこの態度。
 俺の中で何かが切れる音が聞こえた気がした――我慢の限界というやつだ!


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