第26章


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 外はすっかり夜の帳がおろされ、星々と月が輝いていた。俺達はパラセクトに導かれ、切り開かれた頂上の広場へと足を踏み入れたのだ。
 件の山道の疲れもあり、出発は日のある時の方が良いだろうということで、おつきみ山内にて夜を明かすことにした。また頭のできが悪い部下に俺達が攻撃されぬよう、パラセクトが今夜中に周辺地域を見回っている者達に伝令しておきたいと言いだしたのもあった。
 確かに支配下にあるはずの地域で、本来であれば手下である者に襲われていたのでは笑い話にもならない。実際にそのようなことが起こったのだから救えない。上に立つ者というのは本当に苦労するのだ。その下の足場が不出来であればあるほど。
 その話を聞き、そんな事を考えていた時、不意にパラセクトと目が合った事を思い出す。互いに何か同じものが伝わった気がした。
「あれが例の土産物屋さ……。この時間はもう誰もいないから平気だね」
 パラセクトが指差した先にはこじんまりとした小屋が建っていた。店主が消し忘れたのか今だ明かりが灯っているが、確かに人影も誰かがいる気配も無い。
「あれを見せるためだけにここに連れてきたのか?」
 寝床へ案内する前に見せたいものがあると言われ、パラセクトについてきたのだが土産物屋など見せられたところで何も感慨はない。
「違う違う。本当に見せたいのはこっちの方だよ……」
 石で造られた柵に囲まれた庭のような所の前へパラセクトは向かっていく。首を傾げて俺はその後に続いていった。
「崩された環境が徐々に戻ってきてるって言ったよね。もう一つここへ戻り始めたのが……彼らさ――」


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