第26章


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 庭へきらきらと光る星が二つゆっくりと降りてきた。いや――よく見ると星ではない。それは桃色の不思議な生き物。くるりと巻いた前髪と尻尾、背中に付いた小さな羽根。丸っこい体型のそのポケモンは――ピッピ。
 星屑のような光達を体に纏い、庭の中央に置かれた、真ん中が窪んだ岩の周りをくるくると星々と共に踊るように巡る。
「おつきみ山に人間の手が加わってからめっきり姿を消してしまったんだけど、環境が少しずつ戻ってきてからまた彼らも現われるようになったんだ。どうだい、中々のものだろ?」
 確かにこれは一見の価値ありだ。その幻想的な光景に声も出さずに見入ってしまう。ミミロップ達も同様。
 ピッピ達が岩を一周するごとに岩の窪みに柔らかな光が注がれる。その光景はまるで空に浮かぶ月から光の雫が降ってきているようだ。
 何周かした後、窪みは光でたっぷりと満たされ、一瞬、強く光り輝いた。
 ――光が収まるとピッピ達はいつの間にか姿を消しており、真ん中に淡く光を放つ石がはめ込まれた岩だけが残されていた。

「残念ながら、彼らと話したことはないのさ……。あの踊りを見せられるとどうも最後まで魅入られてね。そしてこの通り影も形もなくなるのさ」
 その気持ち、わからなくもない。どこかぼうっとした気分のまま、パラセクトについておつきみ山の洞窟内に戻り、俺達は用意されたそれぞれの寝床へと通された――。


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