第25章


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 さて、どうするか。アブソルは右前足を上げ、自分の手のひら――肉球を恨めしく見つめている。
「仕方ないわねぇん――」
 カイリキーは鼻で息をふん、と飛ばした。
「その子達二人は、縛るか何とかして蔓に引っ掛かってなさぁい。あたしが上から引っ張り上げてあげるわぁん」
 見せびらかすようにカイリキーは腕の一本をぐいと曲げ、岩山みたいな力瘤を作ってみせた。
「それはありがたい。」

 カイリキーの助力で難なく全員、外へ上がれた。真昼の強い日差しが上から照りつけている。
 周りは岩肌に囲まれ、緑は枯れかけているような雑草だけが辛うじて数本生えていた。正に岩山といった風景だ。一本、何とか通れそうな道のようなものが、岩山の斜面や崖に沿って曲がりくねりながら先に伸びているのが見える。
「あたしはもうこれでいいかしらぁん」
 顔の汗を拭いながら、カイリキーは足を投げ出して座っている。
「うむ、ご苦労であった。イワヤマトンネルの管理はお前に任せたぞ。他のポケモン達と共に一帯を治めよ」
「ええ、わかったわぁん。大船に乗ったつもりでいなさぁい」
 どん、とカイリキーは右腕の二本で胸を叩いた。
 こうして俺達はイワヤマトンネルを後にし――。
「ちょっと待ってぇん」
 カイリキーに不意に呼び止められ、俺は振り向く。ちゅっ、と唇を尖らせ、カイリキーは投げキッスをよこす。
 ……心底げんなりしながら俺達はイワヤマトンネルを後にすることになった。なんと幸先の悪いスタートか。目指すはおつきみ山。



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