第25章


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 ……奴が目覚めたか。はて、何かをうまくはぐらかされた気もするが。
「そこに置いておいたから、食べてから下に来るといいわ。……じゃあねー」
 朝食を置いたテーブルを指し示した後、逃げるようにミミロップは部屋から出ていった。
 ――ふう、やれやれ、だ。ため息を漏らしつつ、朝食の置いてある趣味の悪いテーブルへとついた。
「ねぇ」
 ミミロップがひょっこりと入り口の方から顔を出す。
「……まだ何か用か?」
 俺は朝食にかけられた埃よけの紙をはぎ取ってくしゃくしゃ丸めながら、入り口の方を見やった。ミミロップはニヤッとイタズラっぽく笑う。
「私の腕と、あの筋肉だらけの腕、どっちがいーい?」
「んぐ――ッ? ぶはっ、げほっ」
 口に含み飲みかけていた木の実ジュースを俺は盛大に吹き出し、咳き込む。
「ばかものッ!」
 俺が投げつけた丸めた紙を、ミミロップは顔を入り口の外に引っ込めてひょいとかわし、笑いながら逃げていった。
 何なのだ、あいつは!
 頭から湯気が出ているような気がし、わけがわからない思考のまま俺は朝食をどんどん自分の喉の奥に詰め込んでいった。
 結局、朝食は味はおろか、何を食べたかさえ覚えてはいない。しっかり休んだはずなのに、この件でまたどっと疲れた。……はあ。



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