第25章


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 ――む……朝か? 光が目蓋越しに照りつけている。
 随分と長く眠った――筈なのだが……まだ眠い。野宿ではなく、ちゃんとした巣穴で眠れたのも久しぶりだ。表には決して出ない偉業だが、俺は世界を二度も救ったのだ、もう少し寝ても罰は当たるまい。
 天窓から差し込む光から、目を開けずに顔を背け、ふわふわとした毛布をたぐり寄せる。
 ――ん? 毛布? おかしい、確か俺は藁の上に寝ていたはず。恐る恐る目を開けてみると、もこもこの白い綿毛の付いた茶色い二本の腕が交差して、俺の腹の辺りを抱き込んでいた。すーすーと、寝息のようなものを後頭部に感じる。
 眠気でぼんやりとしていた頭が、焦りのようなものを伴ってどんどん覚醒していく。
 ならば、ならば、たぐり寄せたこの毛布のようなものは! ぎくしゃくとした動きで体と首を捻り、後ろを振り向くと――!
「――んななななッ! な、何をしているッ! お前ッ?」
 眠っているミミロップの腕の中から俺は必死に飛び出し、わけのわからない言葉を叫びながら、がさがさと背中で這うように遠ざかった。
「んー……? ――なーに? うるさいなー……」
 目を擦りぶつぶつ文句を言いながら、ミミロップが上半身を起こす。
「お前は何をしていると言っている!」
 ミミロップは目を擦る手をぴたりと止めて下ろし、俺が寝ていた場所と今の俺がいる位置を、二度ほど交互に見直した。そして俺に目を向け、イタズラが親にばれた子どものように、ばつが悪い顔をする。
「あは、は……ばれた?」
「なにを考えて貴様わぁ――ッ!」
 俺の頭の中をぐるぐると感情が回る。頭が熱っぽくなり、言葉がまとまらない。
「えーと、あんまりにも気持ち良さそうに寝ているものだから――つい、釣られて……ねぇ?」
 ねぇ? とはなんだというのだ! わけがわからん!
「だ、大体だ! 何故、断りもなく俺の部屋に上がり込んでいる?」
「あ、朝ご飯を持っていくように頼まれたのよ。ピカチュウが中々起きてこないから。それとカイリキーが目覚めたっていう言伝も、ね」
 む。



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