第23章


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「ずたずたに引き裂いてやる、原形をとどめぬ程にッ!」
 ダークライは両腕を顔の前で交差させ、力を込めるように腕を震わせると指先がナイフのように鋭く尖った。
 俺は頬に電気を集め、地に両手をついて低く構える。
 しゃりん――。
 切れ味を確認するようにダークライは指同士を接触させて、刃物が擦れ合うような耳障りな音を鳴らす。
 しゃりん――。
 二回目の摩擦音と同時に、ダークライはこちらに浮遊しながら向かってくる。
 充電した電流をダークライに束状にして放つ。だが、インクが滲んで薄れるようにダークライは姿を消し、目標を外れた電気の束はその背後の壁を焦がした。先程より少し右にずれた位置にダークライは姿を現し、またこちらに向かい接近してくる。
「ちっ」
 続け様に俺は電流の束を放つがまた同じように消えながらかわされ、ダークライは着実に距離を詰めてくる。
 四発目の電流をダークライが消えてかわす。既に奴との間合いは約三メートル程にまで縮められていた。
 ダークライは消えたまま中々姿を現さない。部屋は静まり返り、自分の心臓の鼓動のみが響く。アブソルは目を閉じ、集中するように黙っている。
 左右に目を走らせる。頬を冷たい汗がつたう。奴はどこから襲ってくる――?

 しゃりん――。
 金属の摩擦音が響いた。




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