第23章


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 じわり――。
 俺達が階段へ向かおうとすると部屋の雰囲気が突如として変わった。どろどろとまとわりつき、ひどく苦い物を噛み潰したような嫌悪感湧くこの邪悪な気配は――。

「――! あいつが来た――!」
 姿勢を低く構え、アブソルは階段を唸りながら睨む。
 ゆっくりと階段から奴が、ダークライが降りてくる。体を支えていられるのか疑わしい細い二本足を生やし、足跡をたてずに一歩一歩階段を踏みしめながら。
 最後の段を降り終え、奴が部屋へと入ってくると階段は最初からそこに無かったかのように壁へと変わった。
「黙って逃がすと思ったか……? 散々体を掻き回してくれたな、この薄汚い鼠めッ!」
 普段の薄笑いは浮かべてはいない。顔は怒りに歪み、体からは黒い煙が立ち上っている。

「随分と後が無さそうだなダークライ。いつもの余裕はどこに置いてきた?」
「後が無い――だと? つけあがるな、たかが体に紛れ込んだ雑菌風情が! 追い詰められたのは貴様らだ。鼠一匹と凋落した神に何ができる!」
 足を収納し、ダークライが浮かび上がる。
「消えるのは――消えるのは貴様らの方だ鼠ぃッ!  俺は消されない、消されてたまるか!」




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