第23章


[02] 



「――ッ!?」
 頭に響く声により目覚め、俺は上半身を起こして辺りを見回す。
周りには、不気味に揺らぐ木が生い茂り、地には根のようなものが蠢いている。
すべてが色を奪い取られたかのような灰色の世界。……少なくともビルの中では無さそうだ。

「今日は来客の多いこと。貴方で一人と二匹目」
 後ろから不意に声をかけられ、俺は身構え振り替える。この声は……。
そこにいたのは、この灰色の世界にはふさわしくない、色鮮やかな不思議な生き物だった。
頭部は三日月を模した冠を被っているようで、煌びやかな光のベールを羽織った体は、丸みを帯びた船のような形をしている。
まるで三日月の化身のようなその生き物は、灰色の茨の檻籠に捕らえられていた。
「このお二方は貴方のお知り合い?」
 籠の傍らには、ニャルマーと、人間……あれは確かサカキ――が倒れている。やはりそうだ。この声は先程、頭に響いた声と同じ。
「ああ、そうだ。……ここは何だ? そしてお前は?」
「ここは悪意の体内。……そして私はその悪意の半身である善意」




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