第23章


[19] 


悪意の核に刻まれた輝く三日月へクレセリアが飛び込む。辺りが三日月の光に包まれ――眩しい、まともに目を開けていられない。
 たまらず目を閉じ、何秒かそのまま光の中を進んでいると、体が浮遊しているような感覚に一瞬、陥った。それを境に強い光は急に収まり、下半身からは石の床に座っているような冷たい感触が伝わってくる。

 目を開け、首を左右に振り素早く状況を確認する。何が起こったのか――俺はいつの間にかクレセリアの背ではなく、洞窟のような場所に座り込んでいた。
 周りには両脇に多数の風化した柱のような建造物が並んでいる他には、瓦礫の山があるだけで誰の姿も見えない。どうやら、クレセリア達とはぐれてしまったらしい。
 またわけのわからない所に飛ばされたものだな。ちっ、無駄にだだっ広い面倒な体内だ。心の中で毒づきながら、ため息混じりに俺は立ち上がる。背後は瓦礫の山で埋もれているようだ。とりあえず前進するしか道は無い。
 そういえばこの場所、どこか見覚えがあるような。そんなことを考えながら、左右に森のように並ぶ柱や床のタイルを眺めつつ、転がっている瓦礫を避けながらあてもなく二本足でぺたぺたと歩を進めていく。

 しばらく歩いていると、金の腕輪が淡く光を放っている事に気付いた。進むたびに何かに共鳴するように徐々に光が強くなっている気がする。
 この先に何かが――俺は四足で駆け出した。



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