第23章


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 後ろ足で地を蹴り前足で地を捉え、跳ねるように駆け続ける。腕輪の光はどんどん強くなっていく。
 走りながら俺は思い出す。そうか、この洞窟はテンガン山の頂上――神との決戦の地、槍の柱によく似ているのだ。
 脳裏をかすめる戦いの記憶。思えばよく勝てたものだ。圧倒的過ぎる力、対峙しているだけで潰されてしまいそうな荘厳で無慈悲な威圧感。あれで戦いに殆ど力を割いていなかったというのだから恐れ入る。
 その絶対的な神を救出に向かっているのだ。超越者である奴からすれば、ただの数多くいる鼠の一匹でしかなかったであろうこの俺が。これほど滑稽な話はあるだろうか。

 さて、色々と思いを巡らせているうちに行き止まりにぶち当たる。何かしらあるだろうと考え無しに突っ走ってきたわけだが、あったのは途中で壁により途切れている下へと続く階段のみ。
 思わせ振りな腕輪の輝きを恨めしく睨み付けながら俺は大きくため息を吐き、行き止まりの壁に背で寄り掛かろうと体重を壁に任せて――ッ!?
 本来止まるであろう位置を通り過ぎ、壁の中へと背中が落ちていく。隠し部屋――!
 そのまま豪快に背中を床に打ちつけ、衝撃ののち鈍痛がじわりと襲う。情けないやら痛いやら。俺は咳き込み、よろよろと立ち上がった。
 くすくす――。後ろから何者かの笑い声が聞こえる。背中を尾でさすりながら振り向いたその先には――。
「面白いね、君」



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