第23章


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「それでは――参ります」
 俺達を乗せると、クレセリアはベールのような翼を輝かせ、重力が反転したかのようにふわりと宙へと舞い上がった。
広大に広がる灰色の世界。地上からではわからなかったが、あの光は俺達の周辺数キロメートルの植物を一掃したに過ぎなかったようだ。その外側は、今だ灰色の植物に覆われている。
ここは深く広い盆地にでもなっているのだろうか。先を見渡しても地平線というものが無く、ひたすら灰色の景色が上へと向かうばかりだ。
見上げてみると、空も地表と同じく灰色で染められていた。真上には新月のようなものが見える。

 クレセリアはどんどん上昇していく。かなり上空まで来た筈だか地平線は一向に見えない。――何かがおかしい。地表と空の区別が無いように見える。
上昇するにつれ、灰色の地表はまだ上へと反り返るように広がっている事がわかり、灰色の空だと思い込んでいた部分を否定していく。この世界は球体の裏側のようになっているのだろうか?
そして、真上に浮かぶ新月が徐々に大きくなっているように見える。近づいているのだ。
どうやらクレセリアはあの新月のような場所を目指して昇っているらしい。

「あの黒い月のようなものは何だ?」
「あれはこの世界の中心。――悪意の核」



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