第22章


[09] 



 ――シルフビル上空。

「――まだ破れないのか」
 ボーマンダがミロカロスを急き立てる。表情は変わらないが、声色に焦りと苛立ちが少し見える。
 ため息を吐きミロカロスは首を横に振る。
「……駄目です、やはり無理ですね。これだけ限定的に強力に結界を張られているとなると今の我らの力ではとても」
 ダークライの張った結界によりボーマンダ達は行く手を阻まれ、シルフビルに入れずにいた。
 アルセウスに生み出されし神々に向けられた特殊な結界。局所的に特化されたその力は非常に強く、転生し衰えた彼らの力では破ることはできなかった。

「ここまでやってくれるとは。やれやれ、余程我らは嫌われているようですね」
「これ以上くだらん遊びを覚える前に始末しなければな」
 ミロカロスは地上に目をやる。
「……いえ、もう遅いようです。玩具の方が届いてしまいました」
 シルフビルの前には数台のトラックが止まっている。
「……例の“再利用”か」
「ええ、吐き気のするあの“再利用”ですよ。誰の記憶から方法を引っ張り出してきたのやら」
「十中八九、発案者であるお前の記憶からだろうな」
「ほう? 随分と刺のある言い方ですね。折れた投げ槍、刺し貫かれた的――
使えなくなったものを同時に再利用できる極めて効率的な方法だったではないですか。貴方も反対はしなかったでしょう?」
「……確かにあの古の戦争を我らの大勝に導いたのは事実だ。だが、ギラティナの離反を招く大きな要因の一つになったのも事実」
「潔癖過ぎるのですよ、奴は。おや? この感じ……噂をすれば、というやつですか――」



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