第22章


[18] 



 奴の呼び声に呼応し、部屋が――部屋がぐにゃりと歪み、揺らぐ。嫌な感情の塊の様なものが部屋に渦巻く。何が起きるというんだ。
 オオォオオォ――。
 幾つもの金切り声や苦痛の叫びが重なったような咆哮を上げながら、床の隙間から黒い染みの様なものが浮き出てくる。
 その悲鳴のような叫びは聞いているだけで何か――自分の中の見えない何かを、削ぎ落とされているような気分だ。吐き気がする。気が狂ってしまいそうだ。
「な、何なんだい、この声――気持ちが……悪い」
 耳を押さえ、ニャルマーはがたがたと震えだす。

「ククッ、実に心地よい歌声だとは思わないか?」
 最上級の音楽を聞いているとでもいうかのように、ダークライは邪悪な目を細める。
「――何をした」
「神のお遊びの真似事だ。随分と良い趣味をしているだろう?」
 けらけら笑いながらダークライは答える。
 床の黒い染みはなおも変化を続けた。泡立ちながら立体を為し、勢いよく縦に伸びる。先が丸く平面状に展開し、顔らしきその平面をこちらに向けた。
 オオォングウゥ――。
 平面に幾つもの顔状の泡が浮かんでは平面の中に沈んでいく。一つ一つが苦しそうな叫び声を上げている。

「さあ、ショータイムだ」




[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.