第20章


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「あん? オレがコトブキに暇潰しに行ったとき知り合って──」
 ドンカラスは目を輝かせ、マニューラの両手をがしりと羽で掴む。
「つ、連れてきたり出来ますかい?」
「あ、ああ。何なんだ、さっきから必死で気持ちわりーな。わかったから離しやがれ」
 マニューラはドンカラスの羽を振り払い、少し後ずさった。
「おっと、すまねえ。じゃ、じゃあ頼んでもいいですかい?」
「しょうがねーなあ。明日にでも連れてきてやるよ。代わりに何か奢ってもらうからな」
「へっ、酒でも食いもんでも何でも好きなだけ奢ってやらあ。いやあ、楽しみだ」
 ──翌日。
 ドンカラスはいつものテレビのある部屋に大きな鏡を置き、鼻歌を歌いながら身だしなみを整えている。蝶ネクタイに羽飾り──普段からは考えられない着飾り様だ。
 扉を二回ノックする音が部屋に響いた。続けて扉を開ける音がドンカラスの背後から聞こえる。
「おお、エンペルト。この格好どうだ? キマッてますかい?」
 鏡ごしにエンペルトを確認したドンカラスは、くるりと振り返りポーズをとる。
「……はあ、大丈夫だいじょーぶ。それ、朝からもう十回は聞いた。そんなことよりドン、マニューラだ。下のエントランスで待っている」
「おお! そうですかい!」
部屋を飛び出し、嬉しそうにドンカラスはエントランスに駆けていく。
「本当に何なんだポチャ……?」


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