第20章


[29] 



 ドンカラスはエントランス二階の手すりに飛び乗り、下を見渡す。
 エントランスの一階には黒色と桃色、二匹のマニューラが待っていた。いつもの黒いマニューラがドンカラスに気付く。
「おー、糞カラス。昨日言ってたダチを連れて来てやったぜ」
 ドンカラスはゴホンと咳払いをし、二階から下に飛んで降りた。そして桃色のマニューラに向かいお辞儀する。
「こんな汚ねえ所に、ようこそいらっしゃいました。えー、あっしは──」
桃色のマニューラが口を開く。
「おい、キッサキの。こいつがおめーの言ってた糞カラスかよ?」
「ああ、そーだ。間抜けな面してやがんだろ? ヒャハハ」
 ドンカラスは桃色のマニューラの、黒色によく似た乱暴な口調に唖然とする。
「……あの、えーと、本当に『極道の♀達』に出ていたマニューラさん何ですかい? 失礼ながら、映画での淑やかそうなイメージと全然違うんで」
「ああ、そーだ。これでも売れっ子なんだぜ。映画とイメージが違うって? 馬鹿かオメー、あんなん演技に決まってんだろーが。アヒャ!」
 ドンカラスの中で何かが音を立てて崩れていく。
「どーだ? 糞カラス。こいつ、オレと似てんだろ? 出会ってすぐに意気投合しちまったんだぜ、ヒャハハハ」
「クハ、クハハハハ……糞ネコがもう一匹……」
 ドンカラスの恋は終わった。

続かない。
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