第20章


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《俺を忘れたのかい?》
 アルセウスか?
《違う》
 ディアルガ? それともパルキア?
《違う違う。いいよ、思い出せなくても。俺は君がまだ小さかった時に死んでいるから。……少し寂しいけどな、はは》
 何なんだ?
《ピチュ……いや、ピカチュウか。無事に立派に成長してくれたみたいで嬉しい》
 だからお前は何なんだ。
《呼び戻された魂。簡単に言えば幽霊かな》
 ふざけるな。知らない霊になどとり憑かれる覚えはない。俺の体から出ていけ。
《――の――にこの態度。こんなひねくれた子に育つなんて――さんは悲しいぞ》
 ? 何と言った?
《おっと、そんな事を言っている場合じゃないみたいだ。時間が無い。さっきみたいに少しの間、体を貸してくれ》
 何ぃ?
《大丈夫、バンギラスとは何度も戦った。それにピカチュウの体の扱いには慣れている。何てったって俺も君と同じ――だったんだから》
 おい、お前は?
《こんな風に、成長した君と話す機会を与えてくれるなんて、神様は随分と粋な人みたいだな。》
 何故だ。勝手に涙が溢れてくる。
《泣くなって、男だろ? さて、しばらく寝てるといい。もう子守歌がいる歳じゃないよな? もうちょっと話したかったけど……それじゃあ、な》
 待ってくれ――

「どうした? もう終わりだというのか!?」
「……いや、まだだ」
 ピカチュウは立ち上がる。
「久しぶりだな、バンギラス」




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