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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[03]８月５日(土方)

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赤ん坊と荷物を手渡された。

どうやら今日は俺が子守り役らしい。

｢それじゃあ！｣

母親である華蓮は、それだけを告げて副長室を後にした。

残された俺は、赤ん坊を抱いたままその場に立ち尽くしている。

…どうしろってんだよ。

とりあえず赤ん坊を座布団の上にそっと置いてみた。

今のところはご機嫌も麗しいらしく、パタパタと元気に手足を動かしている。

なんだ。別に手なんて掛かんねーじゃねぇか。

泣くのはどーせミルクかオムツの時ぐらいなんだろ？

だったらそれまで書類整理でも…

｢うっ…うぅっ…うぇ～～ん｣

机に向かい、ペンを走らせようとしたその瞬間だった。

赤ん坊が急に真っ赤な顔をして泣き出した。

こんな時、母親には泣き方で言いたい事が分かるらしいが、俺はそんな勘も才能も持ち合わせてはいない。

赤ん坊と共に託されたバッグを慌てて探ると、中から[金太郎マニュアル]というノートが出て来た。

急いでパラパラとめくると
…あった！

【泣いた時】の項目。

何なに…

『金太郎が泣いた時は、まずオムツを開いて見る。』

オムツか…。

開く前に、紙オムツに鼻を押し付けて臭いを嗅ぎ、一応中身を確かめてみた。

どうやらデカイ方ではないらしい。

じゃあ水分の方か…？

俺は慣れない手つきで恐る恐るサイドテープを剥がし、紙オムツを開いた。

そして股部分に触れ、確認すると、中にある高分子吸収ポリマーがゼリー状に固まっていた。

やはり水分の方だったか。

小さな足をヒョイと持ち上げ、多分に水分を含んで重くなった紙オムツをはずしてやる。

するとそれまで鬼の形相で泣き喚いていた赤ん坊が、｢ふぅ｣と溜め息をつき、落ち着きを取り戻した。

それを見て、俺も安堵する。

新しい紙オムツを装着してやろうと、再び足を持ち上げる。

すると、まだ蒙古斑が広範囲に残る、小さな小さな尻が見えた。

赤ん坊の尻…

小さくて、真っ白で、柔らかそうなそれから、俺は目が離せなかった。

｢…か…かわいい…｣

気が付けば、俺はそんな事を呟きながら、赤ん坊の尻を撫で回していた。

・―・―・―・―・―・

｢よーし、オムツもきれいになったぞ。

これで満足だろうが、コノヤロー。｣

赤ん坊は口角を上げ、ニコリと微笑み返した。

天使のようなその純真無垢な笑顔を見た瞬間、俺は思わず赤ん坊を抱き上げてしまった。

何だ、何なんだ、この感情は！

かかか…かわいい！！

犬や猫もかわいい。

しかしそれとは違うかわいさが、コイツにはある。

何なんだ、コレはー!?!?

沸き上がる感情を押し殺しながらも、俺は赤ん坊をひしと抱き締めていた。

するとしばらくして、スースーという小さな寝息が聞こえてきた。

小さくて、柔らかくて、温かい生き物が、俺を信頼し、寝息を立てている。

嬉しいような、手離したくないような、何とも表現し難い気持ちだったが、仕事をせねばならない事に気付き、赤ん坊をまた先程の座布団に置いた。

そーっと、そーっと、

やさしく静かに置いて、

頭の下から腕を抜いてっと…

｢…ふっ…ふぐぅっ…｣

あー！しまった！！
俺とした事が抜かった。

とっくに眠ったもんだと思いきや、まだ眠りかけだった。

もっと慎重に取り掛かるべきだった。

俺は改めて腕を頭の下に入れ直し、赤ん坊の側に添い寝した。

乳臭い、桃のほっぺたを眺めながら、つい微笑を浮かべる。

そのまましばらく赤ん坊を存分に堪能していた俺だったが、やはりそこは人間。

突然の生理現象に見舞われた。

ションベンしてぇ…

しかし今コイツの頭から腕を抜けば、また起こしてしまう事になりかねん。

しかし生理現象に逆らえる程、俺はタフでもない。

どうしよう…

何か役に立ちそうな物…

えーっと…あった！ペットボトル！！

今朝女子隊士が｢新製品だそうです｣と差し入れしてくれたお茶の空きボトルが、足下に転がっていた。

コレ幸いとばかりに、俺はそのペットボトルを足で手繰り寄せた。

そして片手でフタを開け、飲み口をズボンのファスナー部分から差し込む。

よし、これならどうにかトイレまで行かなくても済みそうだ。

安心した俺は、たっぷりと尿の入ったペットボトルを机の上に置き、そのまま赤ん坊と共に眠りについた。

・―・―・―・―・―・

｢トシ、どうだ金太郎ちゃんの様子は。

あ～、一緒に寝ちゃってるのか。

…ん？何だこれ…

あっ、コレ最近よくＣＭでやってる【わ～いお茶】の新製品じゃん！

コレ一度飲んでみたかったんだよね～。

喉乾いたから貰っちゃお～っと。｣

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