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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[19]12月13日(お妙)

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華蓮さんが、

「生活の為に、今まで集めたブランド品を売ろうと思うの。」

と言い始めた。　

あのブランド志向の華蓮さんがそれを売ろうと言うのだから、相当お金に困っているのだろう。

元ミス大江戸小町が持っているブランドの品々となれば、あちらこちらの男性から貢がれた値の張る物に違いない。　

私はそれ見たさの興味本位で手伝いに行く事にした。

　・―・―・―・―・

「銀時が帰らないうちに片を付けなくちゃね。」

と、華蓮さんは大きな段ボール箱を天袋から出した。　

多少ほこりをかぶった箱を開けると、そこには色とりどりのブランド品がデパートのショーウィンドーよろしくギッシリと詰まっていた。

「う…うわぁ。」

驚きのあまり声にならない声を上げる私をよそに、彼女はそれらを取り出し、仕分けを始めた。　

まず最初に取り出したのは、【類・美豚】のハンドバッグだった。　

これは流行の無い定番商品なのだから、手元に置いておいても損はないだろう。

しかし彼女はそれを[売る]と書いた箱にポイと投げ入れた。

「何で！？

これなら何年経っても流行に左右されないじゃないですか。

それなのに売っちゃうんですか？もったいない。」

思わず私が止めると、華蓮さんはニヤリと笑いながら言った。　

「実はね…」

彼女は押し入れから全く同じ型のバッグを取り出した。　

「そっちのは元カレだったＩＴ企業の社長に貰ったの。

で、こっちは合コンで知り合った商社マンに買わせたヤツだっけかな。

とにかく２つ持ってるから、１個売ろうかと思ってね。」

社長や商社マンと付き合いがある事もスゴいが、それ以上に同じ物を２つ買わせて1つ売ろうというその根性に恐れ入った。

そして次に取り出したのは、【絵留芽巣】の看板商品、[蹴り]と[罰金]だった。

「わぁー、コレ両方共女の子の永遠の憧れのバッグじゃないてすか！

こんな高額な物も買って貰っちゃうなんて、さすが華蓮さん！！」

しかし彼女はまたそれらを[売る]の箱に入れた。　

「えー！それも売っちゃうの！？

だったら私に下さいよ！」

一旦[売る]の箱に入れられた２つのバッグに慌てて手を伸ばすと、華蓮さんはその手を振り払い、バッグに塩を振り掛けた。　

「コレ、ある大企業の会長に買って貰ったんだけど、その直後に彼、死んじゃったのよね。

老衰で。」　

その瞬間、私は思わずバッグから手を引いた。　

続いて出て来たのは、【紗根留】の真っ赤なピンヒールだった。

このような華奢で派手なデザインは履く人物を選ぶものだが、産後も抜群のスタイルを保っている華蓮さんなら違和感なく履きこなせそうだ。

しかし、

「コレはあるロック歌手と付き合ってた頃に買って貰ったヤツだわ。

その彼、自分で買って来て私にプレゼントしたクセに、私が履くと自分より身長が高くなっちゃうって逆ギレしたのよね。

そいつ、ロンドンブーツ履いて身長ごまかしてたの。」

例によって[売る]に入れられた。　

その後も沢山の男性から貢がれた名のあるブランド品が、これでもかと湧いて出たが、私はふとある事に気が付いた。

「そういえば、銀さんからは何も貰わなかったんですか？」

まあ奥さんが生活の為にブランド品を売らなくてはならないような懐の寒い男だ、大した物はあげてないに決まってる。

私はそう高をくくっていた。

そんな私の意地悪な問いに、華蓮さんは答えた。

「そうね。あんまり良い物は貰った覚えはないわね。

アレ以外は。」

その視線の先には、定春のしっぽに包まれてスヤスヤと眠る、金太郎ちゃんの姿があった。

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