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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[18]１２月４日(沖田)

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近藤さんが、今にも泣き出しそうな顔で言った。

「松平のとっつぁんがさァ、『今年こそは色気のあるクリスマスを過ごせ』って、コレくれたんだけどさァ…」

差し出された写真を見ると、そこにはお世辞にも見目麗しいとは言い難い、醜女が写っていた。

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お見合いは、政治家やどっかのお偉いさんが贔屓にすると噂の【寺池屋】という料亭で行われた。

手入れの行き届いたこぢんまりとした庭園が見える座敷には、お相手であるお嬢さんと、仲人さんが座っている。

それに向かいあった形で、近藤さんと土方さんと俺が並んで座している。

本来なら松平のとっつぁんもこちらに座っているのが当たり前だろう。しかし、この度は訳あってちょいととっつぁんにはご無礼していただいた。

想い人のいる近藤さんとこのブスッ娘を夫婦にさせる訳にゃあいかねェ。

それを阻止する為にも、とっつぁんに邪魔してもらっちゃあ困るんでさァ。

とっつぁんは今頃、俺の部屋で亀甲縛りになってもがいてるに違いねェ。

分かってくれ、とっつぁん。悪く思わないで下せェ。

ブスッ娘はさっきからチラチラと近藤さんを見ては、顔を赤らめている。

それに対し近藤さんは、半泣きで居心地悪そうにしている。

早いとこケリつけて、近藤さんをこの窮地から助け出してやりやすぜィ!!

お互いに牽制し合い、なかなか口を開かずにいると、痺れをきらした仲人が咳払いをして、偉そーに話し始めた。

「いやはやご両人ともシャイで、なかなか話しを切り出せないでいるようですなァ。はっはっは…

では私がお尋ねするとしよう。

え～…ご趣味は？」

うわ、キタ！

お見合いの席における古典的かつベタな質問!!

『私が…』としゃしゃり出てくんなら、もっと気の利いた事言いやがれ、このダメ仲人が!!

「私は、お茶と生け花を少々…」

って、ブスッ娘もブスッ娘でベッタベタの模範的回答持ち出したよ!!

そうか。そっちがそう来るなら、こっちはこうだ。

「アレ、じゃあ残念ですねィ。

近藤さんはそういうしおらしい事やってる人よりも、薙刀やら格闘技やってるようなイカツイ女が好きなんですよ。

ね、近藤さん!!」

それまでの曇った顔が急にパァッと明るくなり、近藤さんは首を縦にブンブン振った。

よし！まずは第一関門突破…

「実は私、少林寺拳法の有段者なんです。」

って、オイ！マジかよ!!
少林寺拳法!?有段者!?!?メッチャ強ぇじゃんよ!!!!

「コレ言っちゃうと近藤さんに嫌われちゃうんじゃないかと思って、言わなかったんです。てへっ！」

ブスッ娘はペロッと舌を出して可愛い演出を試みた様だが、残念ながら舌と同時に出っ歯もお目見えして、はいアウト～。

それに嫌われる以前に、もうこっちは断る気マンマンで来てるからね、コレ。

しかしマズイな。こっちの好みとあっちの趣味が上手いこと噛み合ってしまいやしたねィ。

よし、じゃあ今度はこっちから口撃を仕掛けてやりやすぜィ！

「近藤さんって、子供は沢山欲しいんですよねィ。

しかも全員男の子がいいんでしょ？女の子だとお嫁に行っちゃうから。

どうですか、お嬢さん。男の子ばかり沢山産む自信おありですかィ!?」

よし！普通の女子ならこんな事仄めかされたらドン引きまさァねィ。

子沢山、しかも男の子ばっかり!!

…うわァ、考えるだけでもウンザリ。

「大丈夫ですよ。
私も子供は大好きだし、それに確実に男の子を作ろうと思えば、排卵日を狙って仕込めばいいだけの話しですから！」

ウォォ～！墓穴掘ったァァァ!!

そうだった。この女、もう３０も過ぎた、[女子]ではなく[女]だったよ。

こんな質問くらいじゃビクともしやしねェ。
それどころか平気で『排卵日』とか『仕込む』とか言いやがる。

ヤベェ。思っていた程甘い奴じゃねェ。

こりゃあ気合い入れてかからねェと、完全に取って喰われちまう。

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結局あのブスッ娘は、こっちが質問する事にことごとく打ち勝ち、我々は途方に暮れた。

｢料理が上手くないとダメ｣と言えば｢調理師免許を持っている｣と言うし、

｢安月給でマイホームなんて夢のまた夢｣と言えば｢私、マンション持ってます｣と言う。

｢あっちこっちの女に手出しするような男です｣と言えば、｢女を知らないよりマシです｣と言うし、

｢そもそも女嫌いです｣と言えば｢浮気の心配が無いですね｣と言う。

参った。

嘘のネタも尽きた。

もうこれ以上近藤さんの顔を汚すような嘘もつきたくない。

俺は腹をくくり、最終兵器を繰り出す事にした。

「お嬢さん。

そんな近藤さんみたいなゴリラ男より、こっちのイケメンの彼の方が何倍も良いに決まってまさァ。

彼も『近藤さんなんかより、俺の方が絶対幸せに出来る』って言ってましたぜィ。

名前ですかィ？

土方十四郎でさァ。」

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