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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[14]10月25日(新八)

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目を開けると、そこはコンクリート壁だけの殺風景な部屋だった。

「お目覚めかい？おぼっちゃん。」

ツルツルに剃ったスキンヘッドの厳つい男は、ニヤニヤと笑いながら僕のそばに座った。

訳も分からずキョトンとする僕の顔には、短くも鋭いナイフが突き付けられている。

「お前はたった今から、悲劇の少年となる。

誘拐したお前と引き換えに、縁者に身代金を要求してやる！」

男は後ろ手に縛られた僕の懐からケータイを取り出し、メモリーを開いた。

♪トゥルルルルー、トゥルルルルー…

『アン、もしもし！？

何だよぱっつぁん。今日の仕事はもうキャンセルになったって言ったろーが、このタコスケが！』

銀さんの機嫌悪そうな声がケータイ越しに聞こえる。

「そのぱっつぁんは俺達が預かった。

返して欲しくば今から俺が言う場所まで金を持って来い。」

スキンヘッドが電話の向こうの銀さんに言った。

銀さんごめんなさい。

僕が不甲斐ないばっかりに誘拐なんてされちゃって、迷惑をかけてしまう事になるなんて…。

きっと銀さんの事だ、自分の危険など顧みる事なく奴らの指定した場所に乗り込むに違いない。

腰には愛刀[洞爺湖]一本を携えて…

「え～、タリィ。」

え？

「ッんだよ、高々新八だろ？

何でわざわざ俺が迎えに行かなきゃなんないわけ？

俺ァあいつに躾してるよ。
『自分の事は自分でしなさい』
ってよォ。

電車賃ぐらいあんだろ。テメェでうちまで帰って来いっつっとけ！」

ブチッ！ツーツーツー…

あ、あの…アレ？銀さん？？

ちょ…何コレ？放置プレイ！？

助けに来てもらえなかったショックにうちひしがれる僕を尻目に、チッと舌打ちしながら、男は次の番号にダイヤルし始めた。

「志村新八は預かった。

こちらが要求するだけの額の現金を用意しろ。

そうすればコイツは返してやろう。」

すると受話器の向こうで聞き慣れた野太い声が聞こえて来た。

『え～っ！新八君がァァァ！？

貴様何モンだ？

まさかお妙さんにまで手を出しちゃいないだろうな！？』

近藤さんだ！

「お妙？そんな奴は知らん。」

『そうか…良かった。

じゃあ新八君には遅くならないうちに帰宅するように伝えてくれ。じゃあな！』

ブチッ！ツーツーツー…

…ってオイ！お前は姉上の心配だけして、弟の僕はアウトオブ眼中かいィィィ！！

っつーかアンタ警察だろうが。

誘拐されてる少年を見て見ぬフリかよ！

全く…。

その後も土方さんにかければ

『新八？知るか、んな奴。』

だし、沖田さんにかければ

『誘拐して後ろ手に縛ってるだけ？

おたくらどんだけ甘い監禁してるんでィ。

どうせなら鞭とろうそくと三角木馬で…』

と痛め付け方のレクチャーするし、

姉上なんて

『金出せだァァァ～！？

そんな金あったらとっくにうちの道場を建て直しとるわァァァ！！』

と僕を見捨てて電話を切った。

さらに華蓮さんに至っては

『あら～、一人でも食い扶持が減ると助かるのよね～。ありがたいわぁ！』

と誘拐犯に感謝する始末。

僕はどんだけ周りから必要とされていないかをこの身でヒシヒシと感じ、呆然としながらコンクリート壁を眺めた。

「あの…僕、ここんちの子になっていいですか？」

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