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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[13]10月18日(土方)

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昨夜、万事屋が逮捕された。

暴行罪だ。

「殴ったよ。あァ殴ったさ。認めるよ。

だがアレは正当防衛だ。」

取調室で俺と向かい合って座る万事屋は、このセリフばかりを繰り返している。

しかし殴った理由を聞くと、その時だけは黙秘権を駆使する。

昨晩、葛飾南斎氏からの通報で逮捕してから数時間、こればかりだ。

俺にとって万事屋は、大嫌いな人種そのものだ。

ガサツで、毎日テキトーに仕事をしていて、それでいて腕っぷしだけは強い…

呆れた野郎だ。

しかし、俺にはコイツが訳もなく人を殴る奴だとは思えねェ。

「何か訳があんだろ？

オラ、言ってみろよ。

正当防衛だったんなら言えるだろうがよ。」

「……」

また黙秘かよ。

仕方無ェ、あれを使うか。

俺の経験上、こんな時は情に訴えるのが一番だ。

「お前も早くうちに帰りてぇんだろ？

嫁さんにガキ、新八やチャイナが待ってるぜ。

…温かい飯炊いてよォ。」

ホラホラ、どうだ万事屋。

心揺さぶられて、存分に吐いちまえ！

「…そうですよね、おまわりさん。

僕、感動のあまりポロッと白状しちゃいます！

実は…

…って、そんな簡単にゲロッてたまるかよ！！」

万事屋は椅子にふんぞり返って天井を仰ぎ見た。

「…おまわりさんよォ。

あんたも早くこんなダリィ事なんか終わらせたいんじやねェの～？

だったらさ、『魚心にムツゴロウ』ってね。

…俺、腹減ってんだけどォ～。」

？？？何言ってんだ、コイツ？

だいたい『魚心に』は、『ムツゴロウ』じゃなくて『水心』だろうが！

「あ～もォ！わっかんないかなァ～。

アレだよアレ。

刑事ドラマで取調室って言やぁアレしかねぇだろーがよ！！

アレ出しゃ大概のヤツは口割るだろぅが！！」

万事屋は事務机をバンバンと叩き始めた。

「ホラ早く出せよ、例のモノを！！

腹減って、吐くもんも吐けねェっつの！！」

腹が減ってって…

あぁ、もしかしてカツ丼か！？

俺は呆れながらも、食堂からカツ丼を取ってやった。

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「どうだ。

こんだけ腹いっぱい食ったんだ。ゲロする覚悟は出来たんだよな！？」

タダ飯なのをいい事に、万事屋は三杯もおかわりしやがった。

「さァ吐いてもらおうか！

万事屋坂田銀時、何故お前は画家の葛飾南斎を殴った！？」

万事屋はようやく腹をくくったらしく、息をひとつ吐き、話し始めた。

「…カマ掘られそうになったからデ～ス。」

は？カマ！？

「葛飾南斎がよォ、俺に『【おホモだち】になってくれ』って迫って来たんだよ。

だから身の危険を察知した俺は、とっさに殴っちゃって…」

万事屋は歯に挟まったネギを爪楊枝で掻き出しながら言った。

万事屋、お前悪くないじゃんか！全然悪くない！！

てか俺だってその場面に遭遇したら殴るよ、一発どころかフルボッコだよ！！

「絵画のヌードモデル頼まれてさ、高額なギャラもらう約束だったんだよ。

ところが[今後のお付き合い]まで要求されちゃってさァ～。

それでガツン…とね。」

「…釈放だ。

嫁さんに身柄を引き取りに来てもらうぞ。」

・―・―・―・―・―・

女子隊長室に内線を繋ぎ、嫁さんである華蓮に連絡した。

自分のダンナが逮捕された事実に驚き、動揺を隠せない様子だったが、無罪放免と聞き、急いで電話を切った。

今、息せき駆けて廊下を走っているに違いない。

きっと愛する旦那のもとへと涙を湛えてやって来るのだろう。

そして

『私達家族の為に身を呈し、危険な目に遇ったのね…ごめんなさい。

でもありがとう、銀時。』

と、ヤツを抱き締めるに違いない。

結婚、嫁さん、ガキ、家族…

それもなかなか悪かねェかもしれねェな。

「銀時ィィィ～！！」

廊下を走る音と共に、華蓮が取調室の扉をを勢いよく開けた。

「アンタ、何中途半端な事やらかしてんのよ！？

巨額のギャラが手に入るんなら、家族の為にケツ穴のひとつやふたつ差し出して来いやァァァ～～～！！」

…やっぱり俺は、嫁さんも愛もいらない。

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