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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[12]10月17日(銀時)

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いやいや違うね、やっぱ。

分かってる奴にゃ分かるんだよ、ウン。

さすがに芸術家、分かってるわ～！

「あなたのような素晴らしい肉体をお持ちの方を探していました。

是非その筋肉美を私の筆で描き、後世に残したい！

どうかモデルになっていただけませんか！？」

屁怒呂さんが花に水やりをしており、そこをたまたま通りかかった俺にホースの水がかかった。

尋常じゃない量の水が。

取り敢えずその場でビシャビシャのシャツを脱ぎ、絞っているところへ、その[葛飾南斎]と名乗るオッサンはやって来たのだ。

その露になった俺の上半身を一目見て、かのダビデ像を思い浮かべたのだそうだ。

「報酬は君の請求するだけ差し上げよう。

いかがかな？」

勿論俺は二つ返事で快諾した。

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オッサンに連れられて、俺は隣町の閑静な住宅街のど真ん中に位置する大邸宅に案内された。

アトリエはその広大な庭の隅にある、小ぢんまりとした落ち着いた雰囲気の小屋だった。

中に通されると、キャンバスに埋もれたその部屋は油絵の具特有のツンとした匂いで充満していたが、不思議と嫌な感じはしない。

「では早速始めようか。

準備出来たらそこに横になってみてよ。」

オッサンが指差した先には、趣味の悪い赤いベロアのソファーがあった。

俺は素直にそこへ横たわった。

「いやいや、違うでしょ。

私は言ったはずだよ。

『君の肉体美を描きたい』って。」

キャンバスの前に構えたオッサンは、鉛筆を振りながら眉をしかめた。

「え？…あ、そうか。」

オッサンに指摘され、俺は着物とシャツを脱ぎ、パンツ一丁という姿で再びソファーに横たわった。

するとオッサンはまたもや鉛筆を振りながら、ややキレ気味に言った。

「何やってんの！

言ったでしょ、僕は『君を見てダビデ像を思い浮かべた』って。

ダビデがパンツはいてますか？え！？」

え、ウソ！じゃあパンツはいてちゃいけないのか！？

しかもさっき道端で出会ったばっかのオッサンに、スッポンポンをさらけ出さないといけないのかァァァ！？！？

さすがの俺も、最後の一枚に手をかける事には躊躇した。

「君、奥さんも子供もいるって言ってたよね。

さっき君が提示してきた額なら、十分に家族が一ヶ月間食べていけるはずだが…。」

俺が半分冗談で言った報酬額を、オッサンはスンナリと受け入れた。

その額はオッサンの言う通り、一般家庭の一ヶ月分の生活費に相当するものだ。

オッサンの言葉に目が覚めた俺は、迷う事なくパンツを下ろした。

煮るなり焼くなり好きにしてくれ！

俺はとにかく家族が養えれば何でもするよ！！

半分ヤケを起こしながらも、俺はオッサンの指示に従った。

ソファーの上の俺は、まな板の上の鯉。

オッサンの言うがままに手足を動かし、ポーズを作る。

あーでもない、こーでもない…とポーズを模索する事30分。

「ウン、これだ！これでいこう！！」

ようやくオッサン好みのポージングが整い、安堵した俺だったが、はたと自分の取らされているポーズを見て、血の気が引くのを覚えた。

Ｍ字開脚……

慌てた俺は、キャンバスの向こうで満足げに鉛筆を走らせるオッサンに怒鳴った。

「オイ、オッサン！

いくら大金支払うからって、あんま調子ぶっこいてんじゃねーぞコノヤロー！！

なんだよコレ。俺はインリンか！？エロテロリストか！？！？」

するとオッサンは、おもむろに指を三本差し出した。

「ギャラ、３割増しにするって言ったら？」

３割増し…

親子３人の一ヶ月分の生活費に加え、神楽と定春、新八の食費分も出る…

俺もオッサンと同じく、指を３本差し出した。

「ギャラ３割増しに加え、さらに俺のナニも３割増しに描いてくれ。」

ニヤリと笑みを見せ、オッサンは再びキャンバスの世界に没頭し始めた。

・―・―・―・―・―・

ふと目を開けると、もう外はすっかり夜が更けていた。

どうやら俺は同じポーズのままに飽きて、つい寝てしまったらしい。

先程まで鉛筆で下描きをしていたオッサンも、絵筆に持ち替えて一心不乱に筆を走らせている。

「あぁ、お目覚めかい？」

オッサンは絵筆とパレットを置き、キャンバスを俺の方に向けた。

「ありがとう。君の協力のお陰で、素晴らしい絵が出来上がったよ。」

キャンバスには、艶かしい肢体をさらけ出した青年が、惜し気もなく自らのモノを御披露する姿が描かれていた。

「どう？君の要求通り、ちゃんとサイズアップしてるでしょ。」

いや、ていうか…

これは[サイズアップ]っていうより…

[スタンドアップ]

だよね…？

俺がオッサンの意図を理解する前に、既にその答えは目の前にあった。

「また今度、モデルやってくれる？

…僕とオトモダチになってよ。」

オッサンは顔を紅潮させながら、俺の胸にツツーッと指を這わせた。

「や…ちょっ…おま…

嫌だっつーの！！

俺はオトモダチはいてもいいけど、オ[ホ]モダチはいらねーんだよ！！」

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