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負けない!!負け犬【３】～私とＪｒ.と銀時と～《連載中》

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[11]１０月４日(神楽)

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男ってば、本ッッッ当に分かってないネ！

｢は？胸が苦しい？

お前まだ若ェのに狭心症か？それとも心筋梗塞か？

病院行け、病院。そんでついでに心臓と一緒にバカも治してもらえ。｣

｢何言ってんですか、銀さん！

神楽ちゃんは女の子だからホラ、いわゆる『あの人を想うと胸が苦しい…』とかですよ！｣

｢あーそうなの？

んじゃあやっぱ病院行って治してもらえ。気色悪いから。｣

｢銀さん！このお年頃の女の子はデリケートなんですから、もっと丁寧に扱ってあげないと…｣

あーもぅ！銀ちゃんも新八も分かってないネ！！

だからいつまでたっても白髪天パだし、童貞駄メガネのまんまアルよ！

男二人のやり取りと、その傍らでむくれているアタシを見かねたのか、華蓮ちゃんがママバッグを持って立ち上がった。

｢神楽ちゃん、お買い物に行くわよ。支度しなさい。｣

アタシは慌てて華蓮ちゃんの後を追った。

・―・―・―・―・―・

｢ねェ、どこ行くアルか？｣

｢うふふぅ～ん。｣

大きな四駆車のハンドルを握る華蓮ちゃんにさっきから何度も問うけど、ニヤニヤしているだけで教えてくれない。

気が付けば、かぶき町からは遠く離れたオシャレなお店が立ち並ぶ街まで来ていた。

｢ねェねェ華蓮ちゃんってば！どこ行くアルか！？｣

また問うと、華蓮ちゃんはあるお店の前に車を停めた。

｢さぁ降りて。

私の行き付けのお店よ。｣

金太郎をベビーシートから降ろし指差したのは、色とりどりのきらびやかなディスプレイが目を惹くステキなお店だった。

｢もしかしてココ、下着屋さんアルか？｣

｢ランジェリーショップと言いなさい。

下着屋っていうと、小汚ないオッサンが猿股とか売ってそうだから。｣

そう言うと華蓮ちゃんは馴れた様子で自動ドアをくぐり、そのラ…ラ…ランジェリーショップに入った。

｢いらっしゃいませ…あら～、華蓮さんじゃない！久し振りねェ。

その子がこの間生まれたっていう赤ちゃん！？

マァ～！髪の毛がフサフサして、男らしい顔つき…｣

華蓮ちゃんと親しいらしい店員は、腕に抱かれた金太郎のほっぺたをつついた。

うっかり銀ちゃんに似た顔で生まれてしまった金太郎は、｢かわいい｣と褒めてもらえる事はまず無い。

今回もそうネ。

なんかこう…フワ～ッとした表現で適当に誤魔化されるアル。

全部銀ちゃんのＤＮＡのせいネ。

そんな店員の白々しいお世辞トークを眺めていると、華蓮ちゃんがアタシの服の後ろ襟をネコつまみして言った。

｢今日はこの娘のフィッティングしてやってよ。

胸が成長しちゃって、もうサイズが変わって苦しいみたいなの。｣

分かってる！

あのバカ男達と違ってやっぱり華蓮ちゃんは分かってる！！

感動するアタシに向かって、華蓮ちゃんはピースサインを出した。

｢ではこちらでサイズを計測しましょうね。｣

店員に案内されたのは、[ＦＩＴＴＩＮＧＲＯＯＭ]…なんか英語で書いてあるからよく分かんないけど、ものすごく狭い場所だった。

カーテンを閉めて店員と二人きりになると、服の裾から手を突っ込まれ、いきなり胸にメジャーを回された。

｢！？！？｣

驚きのあまり声も出せず棒立ちになっているアタシの上半身を、店員は知らん顔でどんどん測っていく。

｢Ｂ６５｣

そして店員は謎の言葉を発し、カーテンをシャーッて開けた。

｢お嬢さんくらいのサイズですと、このようなデザインはいかがかしら？｣

その手には、完成度の低～い犬のイラストが付いたブラジャーが乗せられていた。

｢…アタシをいくつだと思ってるアルか。

ガキだと思ってバカにすんなよ。

そんなダサダサなブラ着けるくらいなら、サランラップ巻いてる方がまだマシネ。｣

店員はひきつって一歩後退りした。

｢じゃあ神楽ちゃん、こういうのはどう？｣

お店の棚から華蓮ちゃんが持って来たのは、赤地に白の水玉模様で、周りにフリルが付いたブラだった。

パンツもセットだ！

｢好きでしょ、こういうの。｣

さすが華蓮ちゃん、分かってる！アタシの好みドンピシャね。

アタシはそのブラを受け取り、ワクワクとドキドキに顔が綻んだ。

｢あと替えもいるからね。

３セットほど選びなさい。｣

・―・―・―・―・―・

金太郎はお出掛けに疲れて、後部座席のベビーシートで寝てしまった。

アタシは華蓮ちゃんの運転する助手席で、大きな紙袋を抱えて座っている。

結局あの赤い水玉模様の他に、ピンクのチェック柄と白地にレースが付いたのを買ってもらった。

｢Ｂ６５か…。｣

嬉しくて何度も紙袋を覗き込むアタシを見て、華蓮ちゃんがまたあの謎の言葉を呟いた。

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