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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[04]１１月６日(華蓮)

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｢２・３日、家戻んねーから。｣

そう言ったきり、本当に銀時は帰って来ない。

今日で三日目。

一体どこで何をしているのだろうか。

新八君に心当たりを聞いてみても、

｢放っといても大丈夫ですよ。

銀さんの事だから、そろそろフラリと帰って来るんじゃないですか。｣

としか教えてくれない。

心配だけど、もう出勤時間だ。

急いで鞄を肩に掛け、定春の背中に股がって屯所へ向かった。

・―・―・―・―・―・

銀時からの連絡は無いだろうかと気になって、数分おきにケータイの画面を確認するが、音も沙汰も無し。

仕事の書類に[坂田華蓮]とサインをし、先日購入した[坂田]の印鑑を押す。

私は結婚した。

確かに[坂田]になった。

しかし婚姻を結んだはずの夫は行方知れず…

何だ、この状況は。

妻に行き先も告げず家を空けるという事があって良いのだろうか。

いや、良いわけない。

一日中こんな事をグルグルと考えてばかりで、心身共に疲れきった…。

・―・―・―・―・―・

勤務時間終了間際、トイレから帰ってケータイを見ると、【着信アリ】の表示があった。

留守電も入っている。

急いでボタンを押し、留守電を聞くと、待ちに待った銀時からの連絡だった。

ピーッ

『…あ、オレですぅ。

仕事帰りに刀鍛冶の村田鉄子んとこに寄ってって下さぁい。

銀さんでしたぁ。』

ピーッ

…何コレ。

何で鉄子さんとこ？

今はもう攘夷志士からは足を洗って、刀とは縁が無いはずじゃ…

・―・―・―・―・―・

銀時に言われた通り、刀鍛冶の鉄子さんのところへ寄った。

私の【百華】はいつもここで鍛えてもらっているので、鉄子さんとは馴染みだ。

｢こんばんはー。｣

引き戸を開けると、高熱炉のある土間の隅っこで銀時が眠っていた。

どうしてここに銀時が…？

｢坂田さん…この三日間、一睡もせずに鉄を打っていたんですよ。｣

奥の座敷から鉄子さんが出て来た。

｢これを溶かしてね。｣

鉄子さんは床に落ちていた刀の柄と鞘を拾い、私に手渡した。

これは、この小豆色の鞘は、銀時が大事にしまっていた攘夷志士時代の遺物…

柄には刃先が無い…

｢コレを溶かして作り変えたいから、自分に打たせてくれ…って。｣

作り変える？

｢あとは御本人から聞いて下さい。

じゃ、私も寝てないので…｣

鉄子さんはまた奥の部屋に消えた。

何が何だかサッパリわからない。

とりあえず銀時を起こせば分かる話だ。

私は土間に横たわる銀時を揺すった。

｢起きなさい。｣

一回目。

｢起きなさい。｣

二回目。

｢起きなさい。｣

三回目…

三回で起きなかったので、銀時の胸ぐらを掴み、私の背中を反らせ、勢いをつけ…

｢起・き・な・さァァァーーい!!｣

ゴツッッッ!!!!!

ヘッドバットの刑に処した。

｢アダァァァーーー!!!｣

さすがの彼も、一発で目を覚ました。

｢…っ痛ェェェ～…

てめーいきなり何すんだよ!!｣

赤く腫れ上がったおでこを擦りながら、銀時が私を罵倒する。

しかし私が上から睨み付けたら、

｢…す…すいまっせェーん…。

えっと～、何か…調子ぶっこきましたァ…。｣

正座しておとなしくなった。

｢早速なんだけど、コレ…どうしたの？｣

刃の無い刀を彼に見せた。

｢コレ、あなたがとても大事にしていた刀じゃないの。

『俺が国を護ろうとした証だから』って、サラシに巻いて保管してたでしょ。

刃先はどうしたの？｣

聞きたい事を一気に聞くと彼は立ち上がり、神棚に供えてあった木製の小箱を下ろした。

｢コレになった。｣

銀時が木箱を開くと、中には綿が敷き詰めてあり、その上に二つの見た事のあるデザインのリングが乗っていた。

これは…

｢え～っと…結婚指輪になりましたァ。｣

彼はペコリと頭を下げ、私の左手を取り、薬指に小さい方のリングをはめた。

｢いやー、うちバカみたいに飯食う奴らばっかで金無いしさァ、どーやって指輪買おっかなーって考えてたらさ、鉄子が刀鍛冶辞めてアクセサリー屋やるって言うじゃん？

はじめはアイツに作ってもらうつもりだったんだけど、自分で打ったら安く上がるんじゃね？

さらに使わない刀をリサイクルしたら材料費タダじゃね？

みたいな…｣

汗とホコリで汚れた顔がニッと笑った。

今まで大事に押し入れの奥にしまい込んで、私にさえ触らせなかった彼の愛刀。

それを溶かして鍛え直し、この指輪を作ってくれたなんて…

｢昔、俺が国を護ったように、これからはお前を護る。

食費のかかる家族で金には苦労させるだろうけど、心だけはみんなで豊かに暮らせるはずだから。｣

側の机には、私のファッション雑誌の【軽知恵】ペアリングのページが開いていた。

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