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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[03]１１月３日(銀時)

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この間、ファッション雑誌を読んでいた華蓮が、ページを開いたままトイレに行った時の事。

どんな記事を読んでいたのかと覗き込むと、アクセサリーの特集だった。

アイツの好きそうなブランド物の名前がこれでもかと並んでいる。

やっぱ欲しいんだろうな、結婚指輪。

無理してでも買ってやらなきゃか…。

ページを一枚めくると、ペアリングのコーナーがあった。

『特別な物だから…お気に入りブランドで』という見出しの下に、モデルのニィちゃんとネェちゃんが不自然な笑顔で指輪を交換しあっている写真がある。

『特別な物だから…』ってお前、うちの華蓮は常日頃からブランド物の指輪だのピアスだのって身に付けてんぞ、オイ。

ところでそのペアリングっつーのはいくらすんだ？

お、ここにちっこく書いてあるコレか。

いち、じゅう、ひゃく…

…アレアレ？数え間違えたのか？

なんかゼロの数が多すぎたような…

もう一回。

いち、じゅう、ひゃく…

『高級ブランド【軽知恵】ペアリング￥７８０、０００』

…オレは見てない。
何にも見てないぞー。

そんな、たかだかあんな鉄の輪っかが７８万円もするはずが無いじゃねーか。

そうだ、銀時！アレはそう…アレだ、幻だ。蜃気楼だ。ウン。

だから見てない。

一生懸命自分に言い聞かせていたら、華蓮が帰って来た。

オレは慌ててその場を離れた。

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昨日は昨日で神楽のポン酢中栓指輪を笑ってやったら、

｢銀ちゃんはポン酢のフタですらあげてないネ｣

とかほざきやがった。

でもホントの事だけに耳が痛い。

｢神楽ちゃんは指が細いのね。｣

と笑ったその時の華蓮の悲しげな目を、オレはまともに見られなかった。

どうにかして結婚指輪を手に入れられねーかな…。

・―・―・―・―・―・

とりあえずアクセサリーの事なら、派手に着飾るのが商売のホストに聞くのが一番だろう。

オレは開店準備中のホストクラブ【高天ヶ原】へ行った。

｢うぉーい、狂死郎さんいるかい？｣

玄関から呼ぶと、かぶき町イチのホスト・本城狂死郎が奥から出て来た。

｢これはこれは坂田さん。その節はどうもお世話に…｣

こちとらそんなお決まり調子の御挨拶なんか聞いてるヒマはねぇんだ。

オレは狂死郎の話しを遮るように、単刀直入に質問した。

｢アンタ、着飾る事の専門家じゃん？

どっかアクセサリーの安いとこ知らね？｣

すると奴は至極ムカつく返答をしやがった。

｢安い…ですか。

申し訳ないのですが、僕らはお客様の為に着飾るので、安いアクセサリーを着けるわけにはいかないのです。

安い物を身に付けていれば、御指名下さったお客様まで安く見られる。

だから、高級アクセサリーのお店しか存じておりません。

お役に立てなくて申し訳ありませんが…。｣

自分は嫌味を言ったつもりがサラサラないだけに、タチが悪い。

世間離れしてるホストなんかに聞いたオレがバカだったよ。

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日も暮れて、道端には街灯が灯り始めている。

どーしよっかなぁ…

一番星を眺めながら歩いてうちの階段を上がると、玄関の前で人が立っていた。

インターホンを鳴らそうか鳴らすまいかとマゴついている。

ん？よく見たらコイツ…

｢お前…鉄子か？刀鍛冶の。｣

声を掛けると、それまでの不安そうな顔がパァッと明るくなった。

｢あの…銀さんに、その…相談…あって…｣

男勝りな格好してんのに、相変わらずシャイな女だ。

｢で、何だよ相談って。｣

自宅に帰りかけていた新八を引き止めてお茶を煎れさせ、ソファーで鉄子の話しを聞く。

｢実は…廃刀令が敷かれてからというもの、私達刀鍛冶はめっきり仕事が減って…。｣

そうだろうな。

オレもその令によって腰から刀を下ろす事を余儀無くされた、その一人だ。

だから長らく刀を打ちになど行った事はない。

｢だけど、父や兄者が築き上げ、私に残してくれたこの鍛冶屋を潰すなんて…私にはとても出来ない…。｣

鉄子はうつ向いて、肩を震わせている。

｢私は鉄を打つ事しか知らずに生きてきました。

もうこの仕事しかないんです。

鍛冶屋を潰さないでやっていける方法が、何かありませんか!?｣

化粧を知らないキレイな肌を、涙が伝った。

うーん、そりゃ力になってやりたいけど、自分の店さえろくに運営出来てない、そんな経営力の無いオレに相談されても…

｢…あっ！良い事思いつきましたよ!!｣

オレの隣で新八がポンと膝を打った。

｢鉄でアクセサリーを作ったらどうでしょう。｣

｢アクセサリー…？｣

鉄子は顔を上げ、新八を見た。

｢ハイ、アクセサリー屋さんです。

鉄子さんは女性だから、それなりにセンスってあると思うんです。

だからそれを生かし、時代の流れに沿った内容の店にチェンジする。

…どうでしょう？｣

でかした新八!!

さすが万事屋のブレイン。
そのメガネ、伊達じゃないねェ。

｢アクセサリー屋さん…｣

そう呟いた鉄子の顔が紅潮し、目が輝いた。

そんな鉄子に向かって、新八がゴホンと咳払いをし言った。

｢それでは本来なら相談料としていくらかいただくところですが、今回は代わりに…

鉄子さんが初めて打ったペアリングをいただきます。｣

新八がオレの方を向き、ニッと笑った。

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