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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[05]１１月７日(近藤)

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朝の空気が清々しいので、刀の素振りをしようと庭に降りると、いつものようにでっかい白犬に乗って華蓮さんが出勤してきた。

…んっ…何だ？

今何かピカッと一瞬光ったような…

｢おはようございます坂田隊長。

ん？
…あぁーーー!!それって…｣

廊下から歩いて来た女子隊士が何かに気付いたようだ。

｢高級ブランド【軽知恵】のリングじゃないですか!!
もしかして結婚指輪ですか!?｣

｢え…えぇ。まぁ一応…。｣

さすがに女の子は目ざとい。

そうか、さっき光ったのはあの指輪だったのか。

他の隊士達もぞろぞろと集まり、華蓮さんの指輪を羨ましそうに眺めている。

｢さすが坂田隊長！

結婚指輪もブランド物なんて、オシャレですねー。

いぃなぁ～。私も欲し～い!!｣

｢あ…うん…アハハ。｣

照れているのか、華蓮さんはキョロキョロと落ち着かない様子だ。

何て言ったっけ…

【かるちぇ】か？

そうか。そんなブランドがあるのか。

女性はそういうブランド物が欲しいのか。

じゃあやっぱりお妙さんもこういうのをあげると喜んでくれるのかな。

手帳にメモしとこ。

【かるちぇ】…っと。

・―・―・―・―・―・

でもその【かるちぇ】ってどこに売ってるんだろう？

早速華蓮さんの部屋へ聞きに行った。

｢良かったね、華蓮さん。

結婚指輪買ってもらえたんだ。

しかも高級ブランドなんでしょ？

やるなぁ万事屋も。｣

｢あ…いや…ハイ…アハハ。｣

なんだかさっきから歯切れの悪い返事だけど、どうしたんだろう。

まぁいいか。

｢その何だっけ…【かるちぇ】？

それってどこに売ってんの？｣

先程のメモを見ながら聞いた。

｢えっと…この辺りだと四越デパートと真丸井デパートに店舗が入ってるはずです。｣

さすがオシャレな華蓮さん。

すぐにブランド店の場所を答えられる。

｢華蓮さんはどっちのお店で買ってもら…｣

｢さぁーて、今日も元気に市中見廻りと行きますかァァァー!!｣

華蓮さんは上着をはおり、急ぐように部屋を出た。

忙しい時間に押し掛けてごめんね。

・―・―・―・―・―・

今日は会議で警察庁に出向いたので、その帰り道に四越デパートに寄ってみた。

サービスカウンターのお姉さんに【かるちぇ】の場所を聞いたら、五階にあると言う。

俺は店内の高級品達に見守られながら、エレベーターに乗り込んだ。

五階まで上りエレベーターの扉が開くと、目の前のショーウインドーに大きく【軽知恵】と書いてあった。

あ、【かるちぇ】ってこう書くんだ。

普段入る事の無い高級ブランド店に、ドキドキしながら足を踏み入れる。

あぁ緊張する。

やっぱトシか総悟についてきてもらえば良かったかな。

奥まで進もうとしたところで店員さんと目が合ってしまい、｢いらっしゃいませ｣と声を掛けられてしまった。

…あー駄目！もぅ駄目!!

えもいわれぬ緊張や威圧感から逃れるべく、俺はダッシュで店を出た。

・―・―・―・―・―・

｢…というわけさ。

駄目な男だなぁ、俺って奴ァ…。｣

屯所に帰り、今日の情けない一部始終を華蓮さんに聞いてもらった。

華蓮さんも｢駄目な奴｣って思ってんだろうなァ。

ところが、いつもブランド物に身を包んでいるオシャレな華蓮さんからはおよそ予想もつかないような答えが返ってきた。

｢私は、ブランド物の指輪だから喜んで着けているわけではありませんよ。｣

え？どういう意味だ…？

｢実はコレ、銀時が【軽知恵】を真似て作った、贋作なんです。｣

贋作!?しかも自作!!

万事屋、さすがに何でも屋だけあって器用だな。

｢この指輪…何で出来てるか分かります？｣

｢何って…｣

とりあえず金属だよね？

｢うふふ…コレね、元々は銀時の刀だったんです。｣

｢か…刀ァァァ!?｣

俺は驚かずにはいられなかった。

ブランド物と思っていた指輪が自作の贋作だった上、材料が刀とは…

｢銀時は…主人は大事な刀を溶かしてこれを作ってくれました。

つまり【武士の魂】をくれたと私は思っています。

それは私を護るという意志の表現です。

だから私は喜んでこれを受け取りました。｣

武士の魂…

｢だから心がこもっていれば、それがどんなに粗末な物でも必ず相手の心を揺さぶるもんなんですよ。

きっとお妙さんだって、高級ブランドなんて望んじゃいませんよ。

本気の相手なら、高価な物より心のある物の方が良いに決まってますもの。｣

そうか…ありがとう華蓮さん。

俺、間違ってたよ。

やっぱり心が大事だよね。

俺も男だ、お妙さんの為なら身を呈する事もいとわない。

よし、早速俺も愛刀・虎鉄っちゃんを指輪にしよう!!

・―・―・―・―・―・

いつも贔屓にしている鍛冶屋のオヤジに相談してみよう。

あのオヤジに指輪なんて出来るかなぁ…

足取りも軽く鍛冶屋へ向かっている途中で、大江戸マートから出て来たお妙さんにバッタリ出くわした。

俺は偶然会えた嬉しさに、ついこれからの予告をしてしまった。

｢お妙さん!!

俺、武士の魂であるこの愛刀[虎鉄っちゃん]を、あなたの為に指輪にして来ます!!

今すぐ行って来ますから、楽しみに待っ…｣

｢あァ？その汚ねェ刀で指輪作るだァ!?

ざけてんじゃないわよ!!

私に指輪を献上するなら、売って金になるブランド物持ってきな!!｣

エェェェ～!?

華蓮さんに聞いたのと違うんですけど～…。

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