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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[02]１１月２日(新八)

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朝八時。

僕はいつものようにうちを出て、いつもと同じ道を歩き、いつも通りに万事屋の玄関を開ける。

｢おはようございま～す。
銀さん、神楽ちゃん、ちゃんと起きてますかー？｣

いつもと同じ、返事無し。

いつものように二人を起こそうと部屋に上がると、お味噌汁の良い匂いが漂ってきた。

｢あら、新八君おはよう。
二人共まだ寝てるのよ。
起こしてきてくれる？｣

華蓮さんだ。

いつもなら朝ごはんの支度を済まして出勤している時間だけど、さすがに結婚式の翌日は非番なんだな。

まずは銀さんの部屋の襖をノックする。

｢銀さん、朝ですよ。

早く起きて下さい！｣

襖を開けると、だらしなく掛け布団からはみ出してうつ伏せになっていた銀さんは、ゴロリと寝返りを打ち、畳に落ちた。

しばらくはウ～ウ～と言葉にならない声を発していたけど、意外にすぐ目を覚ました。

｢…新八か。｣

はだけた寝間着を直しながら、あくびをして起き上がる。

｢あれ、今日は寝起き良いんですね。

今までならこんなもんじゃ起きませんでしたよ。｣

僕が問うと、銀さんはバツの悪そうな顔でうつ向いて言った。

｢かみさんの躾の賜物だよ…。｣

うっすら涙ぐんでいるのはあくびのせいだろうか。

｢あいつが『起きなさい』を三回言うまでに起きないと、ヘッドバット食らわされるんだ…｣

朝からヘッドバットって…

｢あいつ、昔はあんなじゃなかったのになぁ。

俺、新婚さんって、『あなた、起きてン♪』的なそーゆーのだと思い込んでたけど、アレ違うのな。

まさか現実はヘッドバットとはな～。｣

いや、たぶんおたくの奥さんだけだと思いますよ、そーゆー起こし方。

銀さんとリビングに行くと神楽ちゃんも押し入れから起きてきた。

テーブルには既に朝ごはんが並べられていた。

｢新八君も食べるでしょ。
そこ座ってね。｣

｢あ…ハイ。｣

本当は朝食をしっかり済ませてきたので、食べたくはなかった。

でもさっき銀さんから聞いた【朝起きヘッドバット】の事が頭を過り、恐ろしくて断れなかった。

｢あら、神楽ちゃんそれって…｣

台所からお茶を運んで来た華蓮さんが、神楽ちゃんの左手を覗き込んだ。

すると神楽ちゃんの顔は真っ赤になり、手をサッと後に隠した。

すかさず銀さんが神楽ちゃんの手を取ると、左手の薬指には黄色い輪っかがはまっていた。

｢何だコレ？

見たことあるけど…

あっ、分かった。ポン酢とかめんつゆの中栓だろ？

何、お前ソレ指輪のつもり!?ダハハハハハ…｣

銀さんは神楽ちゃんを指差してバカにした。

すると神楽ちゃんはキッと睨み付け、こう言った。

｢…そうアル。指輪アル。
こんな指輪でも、沖田はちゃんとくれたアルよ。

でも銀ちゃんは華蓮ちゃんにポン酢のフタですらあげてないネ。｣

………

神楽ちゃんの落とした[禁句爆弾]に、皆が黙り込んでしまった。

銀さんの収入が少ない為、まだ二人は結婚指輪を買っていないのだ。

華蓮さんもそんな銀さんを気遣って、｢買ってくれ｣なんて事は言わない。

みんな暗黙のうちにも分かっていた事なので、それについて明言を避けていたのだ。

それなのに…

｢まぁ、神楽ちゃんは指が細いのね。

私にはポン酢やめんつゆのの中栓じゃあ小指も入らないわ。アハハハ。｣

華蓮さんが、重たい空気を打破するかのように明るい声で言った。

正直この状況に窮していた僕と銀さんには、大変ありがたかった。

でも銀さんの表情が少し曇ったのが気になった。
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