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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[17]１月４日(華蓮)

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屯所内の私の部屋に、今日は女性誌記者とカメラマンが来ている。

記者がおもむろにボイスレコーダーのスイッチを入れると、そこからインタビューが始まった。

大抵今までの取材の傾向としては、まず女子隊長になるまでの経緯、その次に現在の女子隊の状況、それからプライベート…という流れが多かった。

今日もそう。

しかしそれらのお決まりの質問に加え、今回は女性専門誌という事もあり、先日の妊娠について問われた。

この事には触れて欲しくないのが正直なところだ。

でも私が真摯に答える事で読者に人命の尊さを感じてもらえるのなら、私と同じく悲しい思いをしている女性が救われるのなら、私は喜んで答えよう。

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｢市中見廻りの様子を写真に撮りたい｣とカメラマンが言うので、女子隊士を数名連れて街へ出た。

こういう日には何事も起こらないで欲しいものだ。

真っ昼間のかぶき町歓楽街は、夜の賑わいが嘘のように静まり返っている。

人と言えば、賄いのおばちゃんがゴミ出しに出て来るか、酔っぱらいが道端で寝ているかぐらいだ。

ところが珍しく、遊郭の二階から煙管の煙を燻らせ街を眺める女の姿があった。

あれは確かこの街No.2の花魁・琴雪太夫…。

先日ある商人の妾として水揚げされる予定だったが、本妻から裁判沙汰にされかけてその話はオジャンになったとかいう噂を聞いた。

だがこの街ではそんな事実あろうが無かろうが噂が一人歩きしてしまうので、当人以外、真相は誰にも分からない。

｢おや、どこの大名行列かと思えば…女子隊長様御一行でありんすか。

今日はお連れが多ござんすこと。

フフ…｣

『女』を武器に日々を暮らす遊女ら、そのトップに君臨する花魁は、まさに『女の中の女』と言えよう。

その分プライドも半端ではない。

私に対しても、いつも闘争心剥き出しで話し掛けてくる。

｢そうそう。

アンタにちょいと野暮なお願いがあるのさァ。

今ちょいとだけ顔貸しておくんなよォ。｣

相変わらずの気だるい様子であごをクイッと上げた。

｢仕事が済んだら行くわ。｣

いちいちこんなイヤミな女にまともに絡んでいたら、きりがない。

そこそこに返事をして立ち去ろうとする私に、琴雪は言い放った。

｢そんな時間じゃあアタイは男と床の中さァ。

アンタの為にも、今の方が良いと思うよォ。

…ねェ、女子隊長サン。｣

意味ありげにニヤリと笑う姿に、一種の不安感がよぎった。

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隊士と記者達を先に帰し、私は遊郭に上がり込んだ。

毎夜行われる男女の戯れの残り香に、ここが浮き世を忘れる為の一時の異空間なのだと再確認させられる。

琴雪は自分の部屋で足を立てて座り、煙管を吹かしていた。

｢アタイさァ、面倒な事って嫌なのよォ。

だから率直に言うわねェ。｣

妖艶な口唇から放たれようとする言葉に、思わず息を飲み身構える。

すると彼女は事も無げにサラリと言ってのけた。

｢銀ちゃんの責任、アンタが取ってよ。｣

ハァ？

率直過ぎて、簡略的過ぎて、意味が全然分かんないわよ。

責任ってどういう事？

動揺甚だしい私とは真逆に、彼女は平気な顔で続けた。

｢アタイさァ、花魁に格上げされる前、銀ちゃんとイイ仲だったのよねェ。

でも『忘れられない女がいる』とかってある日突然消えちゃって、それっきり…。

そんで風の噂でその女と結婚したって言うじゃなァい、私悲しくってさァ。｣

｢…さっさと結論言えば。｣

この女の色目を意識した喋りにも、本妻を前にして堂々と旦那との昔話をする姿にも、もうヘドが出そうで早く帰りたかった。

琴雪は煙管の火を消し、私に向かって煙を吹きかけた。

｢まぁ焦んないでお聞きよォ…。

銀ちゃん、アタイに『水揚げしてやる』って言ってくれたのよォ。

だから私、それ信じてお得意サンをいっぱい棄てたワケ。

ところがドッコイいなくなっちまって…。

お蔭で花魁に格が上がった今でも、それがバッチリ影響してて、なかなかNo.1に上がれずじまいさァ。

あの客がいりゃあ、今頃は…ねェ。

だから、

アタイが銀ちゃん諦めて、アンタが慰謝料くれるか…

それともアタイに銀ちゃんをくれるか…だねェ。

アァ、でもアンタも立場ってモンがあるから、『花魁に旦那取られた』ってェのは困るんだろう。

だったら…分かるよねェ。
おつむの賢～い女子隊長サンだもの…。｣

意地悪く微笑む琴雪に、ゾクリと背筋に冷たいものが走った。

｢どっちもイヤなんて子供みたいな事、言わないわよねェ。

そ～んな事言ってると、うちの遊郭仕切ってる血気盛んな奴等が黙っちゃいないよォ。

クックックッ…｣

お巡りさんを揺すった上、うちにヤクザ放り込もうってか。

｢…ほぉ～。いい根性してんじゃん。｣

先程まで妖艶な不気味さにビビってしまっていた私だったが、だんだんと時間が経つにつれ、開き直りの境地にたどり着いた。

｢悪いけど、旦那の尻拭いなんて御免被るわ。

あげる、アンタに。

まぁアイツがアンタんとこ行くって言えばだけどね。｣

銀時がこんな女のところに行くはずがない。

たとえヤクザを使って力づくで奪いに来たとしても、銀時に敵うわけない。

本妻の意地とプライドと自信を賭けた。

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夜勤の間も気が気ではなかった。

今こうしている間にも銀時のところへ血の騒いだ輩がやって来ているのでは…

もしかしてそいつらの手を煩わす事なく、アッサリあの女の元へ行ってしまっていたりして…

自分で答えを出しておきながら心配になるとは、なんて勝手なんだ、私は。

時計の短針が十時を指した頃、門番をしていた男子隊士が血相を変えて私の部屋へ駆け込んで来た。

｢坂田隊長、大変です！

万事屋の旦那が門の前で…!!｣

｢!?｣

やはり銀時の身に何かあったらしい。

考えるより先に、足が外に向かっていた。

｢銀時!!｣

裸足のまま門を出ると、銀時は血だらけでへたりこんでいた。

｢…おぉ、華蓮。

誕生日…おめでと。

コイツらさっき道でお前に会いたいっつってたからさァ…

連れて来た…。｣

側にはリヤカーが停めてあり、その上には銀時同様血だらけの輩が五・六人山積みになっていた。

｢悪ィ…

差し入れのケーキ、グチャグチャになっちまった…｣

彼は私の大好きな不死屋のケーキの箱を見せた。

｢いい、いいの、ケーキなんて。

銀時が私を選んでくれた、
それだけでいいの…。｣

寒空の下、血に染まる銀時を抱きしめた。

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