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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[12]１２月24日(土方)

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クリスマス・イブだの何だので、街中が騒がしい。

非番の日くらいゆっくりしたいと部屋にいれば、暇なのかと思われて仕事させられるハメになる。

だからこうして外出したのに、こんなにガヤガヤとやかましいのでは全く意味が無い。

結局いつもの休日の定番[北斗心軒]へ足が向く事になる。

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｢いらっしゃいま…あぁ、土方さん。｣

非番の度に寄るこの店の女将・幾松は、未亡人ながらその艶は失っていない。

故に幾人もの交際の申し込みがあったが、死んだ旦那を忘れられず、結局独り身のままらしい。

俺は黙ってテーブルに着く。

そのままジッと座っていれば良い。

毎度同じものを頼むので、メニューを注文しなくとも自動的に俺用特別メニューが出て来るシステムになっているからだ。

少しの時間差で、また次の客がのれんをくぐった。

誰かと思えば…

大嫌いなアイツだ。

｢あら銀さん、いらっしゃい。

悪いけど、お昼時で席がそこしかないんだよ。

相席で良い？｣

幾松が指さしたのは俺のテーブルだった。

アイツもあからさまに嫌な顔をした。

だが食欲に根負けしたらしく、おとなしく向かいの椅子に座った。

……

互いにそっぽ向いて黙っている。

ゆっくり寛ぐ為に来たはずの食事に、何でよりによってコイツが来るんだよ!!

ヨメさんも今日は非番だろ。うちで食え、うちで!!

苛立ちが最高潮に達しそうになった時、タイミング良く料理が届いた。

｢はい、土方さんはマヨネーズたっぷりの【スペシャル土方丼】、銀さんはあんこたっぷりの【スペシャル銀時丼】ね。｣

目の前に、待望のマヨ丼が艶やかな光をこうこうと放ち、到着した。

ビバ、マヨネーズ!!こんなに素晴らしい食品を生み出したのはどこのどいつなんだ。

そいつに会ったら間違いなく俺は結婚するね。

｢オエッ！気色悪っっ!!

コルステロール値アゲアゲ中ですってか、コノヤロー。｣

うっとりとその美しいフォルムを眺めていたら、万事屋がケンカ売ってきた。

｢うっせーな、コノヤロー！

てめーの小豆だらけの甘ったるい丼だって十分気色悪ィんだよ!!

だいたい今日、お前んちのヨメさん非番だろうが。

何で自分ちで食わねーんだよ。｣

当然言い返してくるだろうと思っていたが、今日の奴は違った。

目を細めて、ほくそえんだ。

｢…家内はァ、産婦人科へ行きましたァ♪｣

産婦人科…？

そうか、デキたのか!!

でもはにかんでそれを言うのが、なんかイラつく。

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風呂も入ったし、夕飯も食ったし…さてクリスマス特番でも見ようか。

そう思いながらリモコンでテレビのスイッチを入れ、タバコに火を点けたところで近藤さんから呼び出された。

何だろう。

緊急出動というわけでもなさそうだ。

局長室に入ると近藤さんと総悟が床の間の前に座し、向かい合って私服姿の華蓮がいた。

あぁ、なるほど。

万事屋が｢産婦人科に行った｣って言ってたから、それの報告だな！

もう男の子か女の子か分かんのかな。

親父に似なきゃいいがな。

あっ、妊婦が居んだからタバコ消さねーと…

自分の子が出来たわけでもないのに、こんなにワクワクするのは何故だろうか。

しかし華蓮からの報告は、めでたいものではなかった。

｢…赤ちゃん、今回は諦めなくちゃならないそうだ。｣

既にポロポロと涙をこぼして話せる状態ではない華蓮の代わりに、近藤さんが切り出した。

諦めるって…

どういう意味だ？

出来てたんじゃないのか？

また近藤さんが、絞り出すような声で説明する。

｢一応出来たには出来たんだが、子宮外妊娠と言って、本来赤ちゃんが育つ場所ではないところに出来てしまったらしい。

その場合は…｣

その場合は？

まさか…

｢……中絶……だ。｣

近藤さんは辛そうに顔を背け、肩を震わせている。

華蓮は頬を伝う涙を拭いもせず、うつろな目で下を向いている。

誰も何も言えないまま、重苦しい時間だけがそこにある。

華蓮が何をしたってんだ。

職務上たくさんのワルを斬ってはきたが、命までは奪ってねぇじゃねぇか！

それどころか、自分のガキでもねぇ寺の孤児達や神楽、田舎から出てきた女子隊士の面倒までみてやってるってのに…

神様、あんた一体何見てんだよ。

本当にガキ育てる権利がある女ってのは、コイツの事なんじゃねぇのかよ!!

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フラフラと足元のおぼつかない華蓮を支えながら門をくぐると、万事屋が待っていた。

昼間あんなに嬉しそうだった万事屋にも、さめざめと泣き続ける華蓮にも、掛ける言葉が見つからない。

華蓮を引き渡すと、

｢…んじゃま、そーいう事で、コイツ一週間休ませますんで…｣

と頭を下げ、二人は万事屋のバイクで帰って行った。

生まれて初めて『こんなの要らねぇ』と思ったクリスマスプレゼントだった…

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