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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[08]１０月２０日

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ミツバちゃんの葬儀の朝。

隊士達を集めて局長がゆっくり話し始めた。

｢今日の葬儀の喪主は総悟だ。

従って今日一日総悟が総責任者となる。

こいつの指示に従い、参列者に粗相の無いように行動してくれ。

以上。｣

局長は席を総悟君に譲り、退席した。

総悟君は目を真っ赤にして悲しみ暮れており、周りに気を配るどころではないだろうに、大将である局長は何故手伝ってやらないのだろうか？

総悟君からの伝達も終わり、それぞれが持ち場へと立ち上がる。

｢山田さん、ちょっといいかな。｣

局長だった。

漆黒の礼服が逞しい体によく似合っている。

｢総悟の事なんだがね…

お姉さんとの別れで辛い最中なのは分かってるんだよ。

でもね、悲しみに暮れたいだけ暮れさせて甘えさせていては、あいつは子供のままだと思うんだ。

ここで涙を乗り越えて、一端の男にしてやりたいんだよ…。｣

そんな思惑があったのか。
さすが百人もの男達を束ねている漢だけあって、先を読んだ行動を取っている。

目先の事だけ片付けるのではなく、その末にある現実を見据えた行動を取る…

上に立つ者としての心構えを学んだ。

・―・―・―・―・―・

お坊さんの読経が始まった。

親戚・縁者のいない沖田姉弟なので、隊士以外の参列者はあまりいない。

決して大きな葬儀とはいえないが、総悟君は涙を堪えて立派に喪主として役を務めている。

｢沖田ミツバ様に最後のお別れを｣

お坊さんの合図で全員が棺に花を手向け始める。

透けるような白い肌に似合う白百合と、口紅と同じ淡いピンクの菊を顔の側に飾り付ける。

こんなに美しい寝顔なのに

ミツバちゃん、もう笑ってくれないなんて嘘みたい…

喪主挨拶も滞りなく終わり出棺の時間となる。

火葬場へは局長を始め、隊長クラスのみ同行する事になったのだが…

いない。肝心な人が…。

急いで探しに走ると、物陰からタバコの煙が見えた。

｢土方さん、出棺の時間…｣

声を掛けようとした時、もう一つの人影に気付いた。

別に私はストーカー趣味など無い。

だけど、思わず二人の会話に聞き耳を立ててしまった…

｢姉上の最後、見送ってやらねぇんですかィ？｣

｢…んな権利ねぇだろ、俺にゃ…。｣

｢本当は俺だって、あんたなんかに参列して欲しくなんかないでさァ。

けど、姉上のあんたへの想いを痛いほど知っているから…｣

｢俺はミツバを幸せにしてやれなかった男だ。

そんな男は見送りに行く権利もなきゃ義務もねぇ。｣

｢…じゃあ、愛するあんたを黙って田舎で見送った姉上の、あの切り裂かれるような辛い気持ちを味わうのが、あんたの義務でさァ。

今度はあんたが姉上を黙って見送る番ですゼィ。

今朝の局長の話し、聞いたでしょうが。

今日一日俺が総責任者なんだから、俺の指示に従ってもらいやすゼィ。｣

｢…はいはい、喪主様の仰せの通りに…。｣

・―・―・―・―・―・

ミツバちゃんは雲になった。

天高く昇る煙突の煙にむかって私は叫ぶ。

｢真選組女子隊隊長　山田華蓮、あなたの夢を遂行いたします！

ミツバ様に敬礼！！｣

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