本編「〓Taboo〓〜タブー〜」@


[16]chapter:4-4


 
 
「分かったでしょ?兄さん。他の家の人も迷惑してるんだ」
「分かった..分かった......でもなぁ..このイノシシ..もしかしたら他の動物に苛められるかも..いや!餌がとれなくて飢え死にしてしまうかも…!」
「そんなわけないでしょ...兄さんが拾ってきた時にはすでにこいつ大人だったんだから..もう!僕が山に戻してこようか?」
「いや!こいつは最後まで私が見送ってやらないと駄目なんだ!!ヴァンは家にいなさい!!」
「はいはい...」
 
 
 
 
 
 
 
いつしかの記憶。
ヴァンは走りながらまた昔の記憶を思い出した。
 
 
 
 
 
 
 
 
「シリウス..いや、シン...!」
「ククク..感服だよ感服。その体でよく動いてられる..いや、生きてられるのも不思議だ」
 
ラルはその場から動かなかった。
いや、もう動けなかったの方が正しいだろう。
 
「フッ...こうも早くも見つかるとはな...」
「ククク...こいつは鼻がきくんだよ...!」
シンは怪物を指しながら、そう言った。
 
「ヴァンはどうした?お前が持ってったはずたろ?」
「...さぁな..お前に教えることは何もない...」
「まぁそりゃそうだな、カカカカカ!」
 
「グルルルル…」
「なに...?」
怪物はシンに何かを耳打ちするようにしてシンの耳元で唸った。
「なるほど...この先からヴァンの匂いがするらしい...しかもまだ新しい...お前さっきまでヴァンと一緒にいたな?」
 
ラルは黙ったまま冷静な顔を保った。
「教えることはない、と言ったろ...」
「ククク...どうせ喋らないしな...こいつがいればヴァンは探せるし、お前はもういいわ。さっさと死ね」
 
冷酷なシンの声が闇に響く。
「ヴァンくんも私も皆殺しということか...」
「俺の目的はあいつの持っている指輪だがな」
「指輪...?」
 
ラルは初の情報に目を丸くした。
「やべ、言っちまった...まぁいいか...どうせ殺すんだし...」
シンは頭をかきながら左腕をラルに向けた。
 
「最後に一つだけ..いいか...」
「あぁ?」
「ヴァンくんを...生かすことはできないのか...?」
「はぁ!?なんでそんなことを?あんなクソを生かして何になる!?」
 
シンは高笑いをした。
ラルの表情が硬くなる。
「クソ...?」
「あぁクソだよ!クソ!!それ以外になんて言える!?」
「あの子はずっと貴様を信じて生きてきたんだぞ...!」
「そう!傑作だよなぁそれ!血も繋がってない俺を兄のように思いやがって、反吐が出るぜ!!」
 
「ブチッ...ブチッ...」
ラルの顔が鬼気迫る表情へと変わる。
「血だ...と...?」
「そうだよ!血が繋がってるから家族っていうんだろうが!!違うか!?まったくあいつにはお礼が欲しいくらいだぜ!
この8年間、ずっと兄弟ごっこに付き合ってたんだからよぉ!!」
ドゴッ!!
「つッ...」
 
シンの体が宙を舞った。
そして木に鈍い音をたてて叩きつけられた。
シンのぶつかった木は、乾いた音を鳴らして倒れていく。
「かッ..はッ...どういう...ことだ...!?」
シンはこの夜初めての血を流した。
 
「...口を閉じろ...この下種(ゲス)めが...!」
そこには憤怒するラルの姿があった。
「ガルルルルッ!!」
怪物がラルに襲いかかった。
ガッ!
 
「な...なに...?」
「グルルッ!?」
 
なんとラルは片手で怪物の鼻を押さえつけ制止させた。
怪物は唸るばかりてピクリとも動けない。
 
「この子犬が...貴様じゃ私には役不足だ...!」
「ガルッ!?」
ラルが怪物を睨んだ途端、怪物は大人しく引き下がっていった。
「お前何をしたぁ!?」
「ちょっとした催眠術さ...今日使うのはこれで2回目だ...」
 
シンは初めて顔に焦りを見せた。
「お前...いったいどこからそんな力を...!」
「...死ぬお前が知る必要があるのか?」
「こ...このォォオォオオォォォ!!」
 
シンは左腕に力を込め、ラルに飛びかかった。
「ふん..そんなもグッ...」
「…!」
ラルは突然吐血し、膝を落とし手をついた。
口からだけではない。腰からもまた血が溢れた。
 
──無理をし過ぎた...!『この力』は使うわけにはいかなかったのに…!
逆上して冷静さを欠いたか…!!
 
「カカカカカ!!なんだか知らんがやはり体も限界のようだな!!死ねぇぇ!!!」
 
シンの悪魔の左腕がラルの顔に迫る。
 
──…ここまで...か...ゴメンね...メリル......
 
ラルは目を閉じた。
 
 
グシャッ...!
 
鈍い音が闇夜に響く。
 
 
 
 
 
 
「...ん...?」
ラルは生きていた。
そして目の前には、
 
 
「ヴァン...くん...」
 
シンの左腕に刃をたてる、ヴァンの姿があった。
 
 
chapter:4 兄弟の絆
 
 
〜to be continued...

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