番外編〜楓〜後編


[14]生きて


お医者さんが、懸命に心臓マッサージを続ける。
「太陽さんっ…!」
私には、泣きながら太陽さんの名前を呼ぶことしかできない…。
…自分は、なんて無力なんだろう…。
太陽さんの鼓動は、動きだそうとしない。
そして…
ついに、お医者さんが手を止めた。
「っ…太陽…さん…。」
嘘でしょ…!?
太陽さんが死んだなんて、そんな訳ないっ…!!
私たちは誰も声を発せずに、黙りこんでしまった。

その時だった。
ピッ…ピッ…ピッ…
「太陽さん!」
「お父さん!」
なんと、太陽さんの鼓動がまたリズムを刻み始めたのだ。
そして…太陽さんは目を開いた。
「…ただいま…。」
そう、泣き腫らした目の裕太君の手を握りながら…。

「マジで!?良かったな!」
「さすが楓の知り合いだねー、強いっ!」
次の日、私が太陽さんの事を千夏と隼人に話すと、2人は満面の笑みで喜んでくれた。
そんな2人を見ながら、私は深く息を吸った。
「…千夏!隼人!…本当に、ありがとうね。」
私の突然の礼に、2人はポカンとしている。
「2人がいなかったら…私は独りのままだったから…。改めて、ありがとう。…これからも、親友でいてくれる?」
私の言葉に、まずは千夏が頷いた。
「当たり前でしょ!」
そして、隼人も。
「改まることじゃねぇだろうが。」
…いつか、好きって伝えれるのかな…。

もう、死んだ方がマシだ…って思った事もあったけど…。
今は、胸を張って言える。
生きてて良かった…ちゃんと生きていこうって。
千夏、隼人、太陽さん…今度はきっと、私が何かを返すから。
その時まで…ずっと側に居て下さい。
 




[前n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.