それから


[04]光


ここは何処だ…?
真っ暗で何も見えない。
その中で俺はただうろうろと迷い歩く事しか出来ない…。
「…死んだって事なのか?」
俺の声に答えは返って来ない。
「…嘘だろ…約束したんだ帰って来るって。俺のせいで皆泣いてんだよ…。」
自分の無力さに悔しくて涙が止まらない。
その時だった。
「何してんのよ、こんな所で!」
聞き覚えのある優しい声が聞こえる。
この声は確かに…
「由紀子…!?」
どうして由紀子の声が聞こえるんだ…?
「太陽はここに来ちゃ駄目じゃない…裕太を1人にしちゃ。」
由紀子の声が優しく、悲しげに俺にそう言う。
「…分かってるよ…寂しい想いさせないって誓ったんだ…でも…俺はもう死んでしまうんだろ?」
自分に呆れたかの様に少し嘲笑って言う。
こんな俺は、由紀子にどう映っているのだろう…。
「…何言ってるの?」
その時、冷え切っていた全身に温もりが満ちてきた。
まるで由紀子が包んでくれているかの様に…。
「…何の為に私が会いに来たと思ってるの?…早く裕太のこと抱きしめてあげて。」
「由紀子…。」
少しだけ、由紀子の笑顔が見える気がする。
「…じゃあね…愛してるから。太陽のこと…。」
その瞬間、明るく優しい光に包まれて…。


ピッ…ピッ…
「太陽さん!」
「お父さん!」
皆の泣き貼らした瞳がこっちを向いている。
あぁ…そうか。由紀子が帰らせてくれたんだ…。
「…ただいま…。」
俺は、裕太の手を握った。




[前n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.