〜第5章〜


[07]朝6時49分E


あ……なんか
目まいしてきた。
僕の生活は……いったいどうなるんだ……。

「清奈、本当に悪いけどさ。それだけはかんべ」
「いや! いや! 悠と一緒がいいの!」

首を横に振って、まるで幼い子のように僕の意見をはねのけた。

「でもさ」
「いや」
「でも」
「いや」
「で」
「いや」

こうなったら作戦を変えてみる。

「そうか。清奈は一人で寝るのが、怖いんだな?」
「な……!」

いででで!
叩くの止めてくれ!

清奈は顔を赤くしてグーでポコポコ叩く。

「馬鹿にしないでよ! 分かったわよ、全くもう……」

こうして
清奈が妥協して隣の部屋に寝てくれることになった。それにしても、なんであんなに落ち込んだんだろう?まあ、いいか。

僕は電灯を消し、そのまま寝静まった。




――――――――――――

暗い。
目の前にあるあらゆる光が失せた。
本当に何も見えない。
ここは……ここは


……ここは……どこ……?




ハッと気づいた。
思い出した。
この臭い、
私を締め付けるような、血の臭い。

いやだ……
ここは、まさか……!


私の顔が自発的に恐怖で引きつる。

フェルミ……!
無い。

視界の中に、あの光景が流れるように浮かぶ。
怖い、怖い、怖い。
やめて、やめて、やめて。

消えていく……
変わる、変なものへと。
目の前に広がる仲間達だったもの。
涙が止まらない。
肩が震える。
寒い……
暖かい血ばかり辺りに飛び散る癖に凍死するように寒い。

なんで、あの時の記憶を
呼びさませようと……
するの……

私は目を強く瞑り座り込む。

だが、私のいるこの状況は余りに残酷。
目をそらそうとすればするほど、記憶が鮮明になる。

「お父さん……お母さん……」

「なあに?」
「っ!!」


すぐさま後ろを振り向く。

「シヅキぃ!!」
「どうしたんだい、清奈。なぜそんなに【自らの闇】に恐れる?」
「黙れ!」

フェルミは無い。
だから、私は武器を持っていない。
だからといって、逃がすものか!!

私は数メートル離れた奴に向かって走りこんだ、ところで、

急に止まる。

私の中で、直ちに回避行動に移った。後ろに飛んで避ける。

「誰だ……!」

攻撃したのはシヅキじゃない。
新たなネブラの刺客か。


「後ろね!」

瞬時に振り替えって
いたのは







悠……?
「見覚えは無いか、この武器に」

悠が、銃口を私に向ける。ライボルト。
妖艶というか、醜悪な笑顔を満面に浮かべて。

「悠……?」

どういうこと?
何が、起こって……。

「君の未来だよ」

私の未来が
こんなわけ……!








狙いは本当に正確。
ちょうど
シヅキにつけられたあの右肩の傷と、1ミリのズレ無く撃ち抜かれた。


悠……?
信じていいのねって聞いたのに……。
うんって答えてくれたのに……。
それが未来なの?

「っはあ!!」









覚めた。
夢……らしい。
なんてものを見てるんだ、私は。
息も荒れている。
まだ月光が照らす真夜中だ。


《セイナ》
「フェルミ……」
《何があった? 先程のうなされようは尋常では無かったぞ?》
「何でもない」

なんだ、ただの夢か。
そう思えばまだ救われる。でも、それは本当……?


私の思考がようやく機能し始めた。
今のは悠だったか?

違う。

悠とは魔力の流れが少し違った。だから違うはず。
それに
私の知ってる悠は、あんなこと絶対しない。

そう思えば済む。



だがそれでも安心出来なかった。
私は隣の悠の部屋へと早足で向かう。

「悠?」

扉を開けて見た。
ちゃんと……いるよね?






いた。
よかった……。

敷き布団を捲り、悠の寝顔を確認する。

《全く、こんな夜更けに人騒がせだな。戻るぞ》
「うん」

と言って私は部屋から出ようと足を運んだ。

しかし

ドアノブに手をかけた所で手を止める。

《どうした?》



その瞬間に私から生まれた感情が、私をこの部屋から逃してくれない。

「フェルミ」
《なんだ》
「私……悠の隣で寝たい」

一言で表そう。
私の中にあった、ある次元の欲求がある。
そして、もう一つは純粋な恐怖がある。

「私……悠の側じゃなきゃ、安心して眠れない」
《呆れられるぞ。朝、悠が目覚めた時》
「だって……やっぱり怖い」

こんな幼稚な発言しているなんて。

ふふ

私は、どうにも……

《はあ……もう知らん。我は貴様が弱々しくなるのは嫌うというのに。我は目を瞑る、好きにしろ》
「……ありがと」
《ふん》


私はゆっくりと悠の左側、布団の中に滑り込む。
悠の左手を握る。

ほら

こうしたら

私は

一番……








安心……する……。




そうして
再び眠りに堕ちていった。

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